ラッセル英単語・熟語1500 |
「宗教は文明にたいして有益な貢献をしてきたか」という論文の中で、あなたは Righteousness(公正さ)の概念は相対的なものであるから道徳の基準としては適当ではないと装っています(pretend)。ところがその同じ論文の中で、子供達の教育においては(嫉妬心を防ぐために)厳格な Justice(正義)が必要であると主張しています。私には、Righteousness と Justice の明確な区別がわかりません。
ラッセルからの返事(1963年1月26日付)
拝復 ヴァン・ルーヴェン様
・・・。もしあなたが私のその論文をよく吟味してくだされば、"Righteousness"(公正さ)についての考え方は、社会と時代とともに変化すると言っているにすぎないことがおわかりになると思います。また、子供達を取り扱うに当たっての "Justice" というのは、彼らに機会を与えるのに差別をしないということであり、教育学上の偏見から無慈悲な取り扱いをして子供達を犠牲にすることのないような教育を行うということであり、それは容易に理解されるはずです。この2つの概念及び子供達を正しく取り扱うということは,単純な概念であり、少しも矛盾しないと思います。
'In your article "Has Religion made Useful Contributions to Civilisation?" you pretend that the concept of righteousness is a relative one and thus not suitable as a moral standard. However, in the same article you maintain that in the education of children (to prevent jealousy) strict justice is required. I do not see a clear distinction between the concepts of righteousness and justice....'
Dear Mr Van Leuven, (January 26, 1963)
.. You will find if you examine the essay that I mean no more than that views of 'righteousness' vary with communities and periods. Justice in the treatment of children is easily understood as the lack of discrimination in the opportunities accorded them and the educational practice of not victimising children with harsh treatment for reasons of pedagogic prejudice. The two ideas ('righteousness) and fair treatment of children seem to be simple ones and not contradictory at all.
Yours sincerely
Bertrand Russell
Source: Dear Bertrand Russell, 1969 More info.: https://russell-j.com/beginner/DBR4-08.HTM
<寸言>
相手が使っている言葉の意味をよく理解しないで、先入観のもとで相手を論駁しようとする態度はいただけません。ボキャブラリーの少ない人は、似通った言葉がいろいろあり、それらは必要に応じて使い分けしないといけないということがわかりません。
Righteousness(公正さ)と Justice(正義)との使い分けもその一つです。
速読してよい本と熟読すべき本とは異なります。速読できることを自慢する人も、数学や理論哲学の本になると、文字を追うだけで、意味を理解しないで読んだつもりになる人が少なくありません。もう少し謙虚になったほうがよさそうです。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell