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私は,退院してしばらくの間あまり元気がなかった。しかし,(1954年)5月になると回復したように感じた。私は,ペン・クラブで「芸術としての歴史」と題するハーモン・オールド記念講演を行なった。講演の後,私たち夫婦は,ペン・クラブの幹事から夕食に招待され,文学上の好き嫌いについて思いのまま語って楽しんだ。特に私は,ワーズワース(が大嫌いである。彼の作品のいくつかのものは優れていると認めなければならず,事実,賞賛もし,好きでもある。しかし彼の作品の多くは,非常につまらなく,また耐えられないほど表現が大げさでありくだらない。(相手の幹事にとって)不幸なことに,私は,ワーズワースの詩句の悪い部分を容易に思い出す技術をもっており,ワーズワースを支持する人間はほとんど誰でも困惑させることができる。
For a time when I came out of the hospital I was not up to much, but by May I felt that I had recovered. I gave the Hermon Ould Memorial Lecrure to the PEN club called 'History as an Art'. We were asked to supper afterwards by the Secretary of the Club and I enjoyed indulging my literary hates and loves. In particular, my great hate is Wordsworth. I have to admit the excellence of some of his work - to admire and love it, in fact - but much of it is too dull, too pompous and silly to be borne. Unfortunately, I have a knack of remembering bad verse with ease, so I can puzzle almost anyone who upholds Wordsworth.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB32-130.HTM
<寸言>
ラッセルは、詩人のなかではシェリー(Percy Bysshe Shelley、1792-1822)を最も好んでいます。そのシェリーは「体制派のジェントルマン階級となり邸宅暮しをしたワーズワースを堕落したとして批判」したそうですので、その影響もあるかも知れません。
ワーズワースが最初に住んだ 英国湖水地方の自宅(邸宅)のダウ・コテージは人気があり、世界中のワーズワース・ファンや、湖水地方ファン?が訪れています。「なんだ邸宅ではないではないか」と早とちりする人がいそうですが、シェリーが言っている邸宅というのは Rydal Mount and Gardens のことです。参考まで、写真を添付しておきます。シェリーから見れば「俗物め!」と映ったのではないでしょうか?
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