バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

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 倫理(学)について著述をしようと私を導いたものは,頻繁に私に対してなされた非難 -即ち,私が知識の他の諸分野については多かれ少なかれ懐疑的な探求を行っているのに,倫理(学)の問題については,(自分の)初期の論文の中でムアの『倫理学原理』について詳しく述べている以外は,避けている- という非難にあった。それに対する私の答えは,倫理(学)は知識の一部門ではないということである。・・・私が現在到達している結論は,倫理(学)は独立している要素ではなく,どこまでも分析していくと最後には政治(政治学の問題)に還元できるというものである。・・・。  そのような理由から,私は,倫理的な「知識」というものはまったく存在しないと主張するサンタヤーナの意見に同意するようになったのである。しかしそれにもかかわらず,倫理的概念は歴史的にみて非常に重要性をもってきたのであり,倫理をぬきにして人間の問題を概観することは不適切であり,かつ部分的なものになってしまうと感じないわけにはいかないのである。

What led me to write about ethics was the accusation frequently brought against me that, while I had made a more or less sceptical inquiry into other branches of knowledge, I had avoided the subject of ethics except in an early essay expounding Moore's Principia Ethica. My reply is that ethics is not a branch of knowledge. ...The conclusion that I reach is that ethics is never an independent constituent, but is reducible to politics in the last analysis. ...For such reasons, I had come to agree with Santayana that there is no such thing as ethical knowledge. Nevertheless, ethical concepts have been of enormous importance in history, and I could not but feel that a survey of human affairs which omits ethics is inadequate and partial.
 Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3
 More info.: https://russell-j.com/beginner/AB31-250.HTM

<寸言>
 生命の存在しない世界には倫理の問題は存在しない。人間の存在しない世界にもほとんど倫理の問題はない、と人間(我々)は考える。
 人類がアフリカで誕生してからずっと、人間(人類)の数がとても少ない時にも倫理の問題はほとんど存在していなかった。人類が繁殖し、人間の集団の間で争いが生じるようになって、倫理の必要性が出てきた。それは人間にとって必要なもの(倫理)であって、百獣の王のライオンから見れば、人類が繁栄しないほうがよい世界であり、人類の衰退は喜ばしいこととなる。猫の倫理と鼠の倫理も正反対になる可能性がある。
 ともあれ、社会の発達により、人類(人間)にとって倫理がより重要になっていくのであり、ラッセルが倫理に関する著書を Ethics and Politics in Human Society (1954)(『倫理と政治における人間社会』)と命名した理由がよくわかるような気がする。

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