ラッセル関係電子書籍一覧 |
(民間人に与えられる英国最高の勲章(Order of Merit)がラッセルに授与される時のエピソードです。)
私がリース記念講演(連続講演/講義)をする数年前に,私の旧師であり,友人であり,『プリンキピア・マテマティカ』の共著者である A・N・ホワイトヘッドは,すでにメリット勲章(Order of Merit)を与えられていた。・・・私は,その授与式典に臨むためにバッキンガム宮殿に赴かなければならなかった。国王(注:ジョージ6世,1936年-1952年)は愛想がよかった。しかし,私のように一風変わった,おまけにかつて投獄された人間に対して丁重に振舞わなければならないのでいささか困惑の様子であった。国王はこう言われた。「あなたは,時々,一般の慣例には従われない行いをなさって来られたのですね。」(それを聞き)私は,「はい。ちょうど陛下のお兄様(注:エドワード8世)のように!」と言いそうになったが、言うのをひかえた。それ以来,(それを思い出しては)ずっと楽しかった。
Some years before I gave the Reith Lectures, my old professor and friend and collaborator in Principia Mathematica, A. N. Whitehead, had been given the OM. Now, by the early part of 1949, I had become so respectable in the eyes of the Establishment that it was felt that I, too, should be given the OM. ... I had to go to Buckingham Palace for the official bestowal of it. The King was affable, but somewhat embarrassed at having to behave graciously to so queer a fellow, a convict to boot. He remarked, 'You have sometimes behaved in a way which would not do if generally adopted'. I have been glad ever since that I did not make the reply that sprang to my mind: 'Like your brother.'
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB31-160.HTM
<寸言>
ジョージ6世も、エドワード8世も、みなさんご存知と思います。ジョージ6世は映画「英国王のスピーチ」で有名ですし、ジョージ6世の兄エドワード8世は恋愛のために王位をすてたことで周知の人です。
* 映画「英国王のスピーチ(The King's Speech)」: 現イギリス女王エリザベス2世の父ジョージ6世の伝記をコリン・ファース主演で映画化した歴史ドラマ。きつ音障害を抱えた内気なジョージ6世が、言語療法士の助けを借りて障害を克服し、第2次世界大戦開戦にあたって国民を勇気づける見事なスピーチを披露して人心を得るまでを描く。監督は「くたばれ!ユナイテッド」のトム・フーパー。第83回米アカデミー賞で作品、監督、主演男優、脚本賞を受賞(2010年製作/118分/G/イギリス・オーストラリア合作)。
* エドワード八世: 離婚歴のある平民のアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと結婚するためにグレートブリテン王国成立以降のイギリス国王としては歴代最短の在任期間わずか325日で退位した「王冠を賭けた恋」で知られている。
ラッセル関係電子書籍一覧
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell