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改革による論理的帰結が全て同時に与えられていたなら,習慣に対するショックがとても大き過ぎて,人々は全てを拒否することになりやすい。しかるに(一方),もし人々が,10年ごとあるいは20年ごとに一段ずつ段階を踏むように誘われていたなら,大きな抵抗をすることなく進歩の道に沿うように説得することが可能であっただろう。19世紀の偉大な人々は,知識の面においても政治の面においても革命的ではなかったけれども,改革の必要(性)が圧倒的に明らかになった時には,喜んで改革を擁護した。
When all the logical consequences of an innovation are presented simultaneously, the shock to habits is so great that men tend to reject the whole, whereas, if they had been invited to take one step every ten or twenty years, they could have been coaxed along the path of progress without much resistance. The great men of the nineteenth century were not revolutionaries, either intellectually or politically, though they were willing to champion a reform when the need for it became overwhelmingly evident.
Source: Religion and Science, 1935
More info.: https://russell-j.com/beginner/RS1935_03-220.HTM
<寸言>
現代は変化の激しい時代であり、多くの人々が結局は変化を受け入れているので、10年ごとなどという長い期間でなくても、3年ごとで大丈夫かもしれません。ただし、それは改善の方向とはかぎらず、徐々に改悪へと進む場合も含まれます。社会的に過剰に適応して絶滅してしまった生物もけっこうあるようです。
ここまで書いてきて、それではどんな生物が過剰適応(=進化学の用語)によって絶滅しているだろうかと、google で「過剰適応 生物 絶滅」で検索してみました。ある論文に次のような興味深い記述がありました。もちろん、ひとつの種の全てが絶滅という場合だけでなく、特定の肉体的あるいは精神的特徴を持った集団も含まれます。
「適応の果て:
マンモスやサーベルタイガーの牙がそうなのだが、はじめは有効な武器として生物が備えた器官が、大きいほど偉いというべきか、大きいほど進化に有利に働くため、世代を追うごとに父より子供、子供より孫の牙という具合にどんどん大きく進化してゆく状況がある。もちろん、いくら武器になるからと言っても牙はいくら大きくても大きいほどよいというものではなくて、どこかで有用さが最大になり、そこを越えるとむしろ邪魔になってくるはずである。 ★しかし、いったん進行しはじめた進化の方向性はとどめられない。★ 「そのほうが有利なのだ」と勘違いした進化の力は、細かいことはおかまいなしに牙を大きくし続け、しまいには異様なほど巨大化した牙を持った生き物を作る。これらの生き物は、あわれ、牙が大きくなりすぎたことによる不都合に耐えかねて、滅んでしまうのである。「過度適応」(あるいは過剰適応)とは、つまりそういう意味である。」
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