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私たち夫婦が帰宅した時,ホワイトヘッド夫人(イーヴリン)は,これまでにない激痛の発作に苦しんでいた。・・・。ホワイトヘッドの一番下の3歳になる男の子がその部屋にいた。以前は私は一度もこの子に注目していなかったし,その子も私にすこしも注意を払っていなかった。激痛の発作の中にいる母親を困らせることがないように,その子を何とかしなければならなかった。そこで私は,その子の手をひいて,母親から引き離した。彼は喜んでついてきた。そうして私と一緒にいて,気楽にくつろいでいた。その日から,第一次世界大戦で,1918年に彼が死ぬまで(戦死),私たちは,親友であった。
When we came home, we found Mrs Whitehead undergoing an unusually severe bout of pain. ... The Whitehead's youngest boy, aged three, was in the room. I had previously taken no notice of him, nor he of me. He had to be prevented from troubling his mother in the middle of her paroxysms of pain. I took his hand and led him away. He came willingly, and felt at home with me. From that day to his death in the War in 1918, we were close friends.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1
More info.:https://russell-j.com/beginner/AB16-030.HTM
<寸言>
ホワイトヘッド夫人が(心臓病のため)激痛に苦悶する姿を目にして何もしてあげられなかった(1901年春=ラッセル29歳の時の)体験は、ラッセルの人生観や心情が劇的に変わった出来事でした。以後、ラッセルの人間観、社会観、政治観等が大きく変わっていきます。(なお、当時、ラッセル夫妻は、ホワイトヘッド夫妻とともに、ダウニング・コレッジ(Downing College)内にあるメイトランド教授の家を借りて住んでいました。因みに、私が英国の古本屋サイトで購入したラッセルの本の1冊はメイトランド教授の蔵書印が押してありました。)
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