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我々は人間に従うよりもむしろ神に従うべきであるという原則は,キリスト教徒によって二通りに解釈されてきた。(即ち)神の命令は個人の良心に直接伝えられるか,あるいは,教会という媒体を通して間接的に伝えられるか,の二通りに解釈されてきた。ヘンリー八世とヘーゲルを除いて,今日まで,神の命令が国家を媒体として伝えられるという考えを抱く者はかつてまったく存在しなかった。こうして,キリスト教の教えは,個人の判断の正しさを支持するか,教会を支持するか,どちらかの方法で,国家の弱体化を(必然的に)伴ったのである。
The principle that we ought to obey God rather than man has been interpreted by Christians in two different ways. God's commands may be conveyed to the individual conscience either directly, or indirectly through the medium of the Church. No one except Henry VIII and Hegel has ever held, until our own day, that they could be conveyed through the medium of the State. Christian teaching has thus involved a weakening of the State, either in favour of the right of private judgment, or in favour of the Church.
Source: Power, a new social analysis, 1938, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/POWER07_040.HTM
<寸言>
宗教国家アメリカ。アメリカはキリスト教徒(それもプロテスタント)が一番多く、神を信じている者が多い。しかし、どのような神を信じているかは必ずしも明らかではない。
たとえば、「米国人の死者を最小限にするためには、広島と長崎への原爆投下が必要だった」と考えている米国人は多い(ただし、最近は少し変わってきている)。長崎には、クリスチャンも多く、彼らも無差別に殺されたことを知ると、アメリカ人のクリスチャンも心を痛める。しかし、戦争だから仕方がないと考える人は、「神の命令(何時むやみに人を殺すなかれ)よりも、神の命令に背く国家(米国)を支持する」ことになる。いや、神の命令よりも自分たちの気持ちを優先しており、神など本当は信じていいないのだ、と思えてしまう。
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