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けれども,教皇がアヴィニヨンに移るやいなや,過去三世紀の間勝ち得ていた(教皇に対する)敬意は失われ始めた。これは教皇がフランス王に完璧に従属したせいだけではなく,たとえばテンプル騎士団(注:中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会)の抑圧といったような,甚しい残虐行為に教皇が加担したせいでもあった。フランス王フィリップ四世は,財政逼迫にあったので,この修道騎士団(所有)の土地(he lands of this order.)を切望した。そこで全く根拠なく,この騎士団の人々を異端として告発することを決意し,教皇の支援を得て,フランスにいたこの騎士団の人々を捕まえて拷問にかけ,悪魔に忠誠を誓ってキリスト受難の像に唾を吐いたという告白を強要し,彼らの多数を焼き殺した。一方,フランス王は彼らの財産を処分し,教皇のためにも少し抜き取って提供した。このような行為は教皇権の道徳的堕落の始まりとなった。
As soon as the Popes moved to Avignon, however, they began to lose the respect which they had won during the three preceding centuries. This was due not only to their complete subservience to the King of France, but also to their participation in vast atrocities, such as the Suppression of the Templars. King Philip IV, being in financial difficulties, coveted the lands of this order. It was decided to accuse them, quite groundlessly, of heresy. With the help of the Pope, those who were in France were seized, tortured until they confessed that they had paid homage to Satan and spat upon the crucifix, etc., and then burnt in large numbers, while the King disposed of their property, not without pickings for the Pope. Such deeds began the moral degeneration of the Papacy.
Source: Power, a new social analysis, 1938, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/POWER04_210.HTM
<寸言>
政治家であれ、財界人であれ、宗教指導者であれ、力(権力)を持っている者は、時にでっちあげた事実によって(権力)弱者を人身御供に自らを利する行為をすることがある。善良だと考えられている人たちであっても保身のために「記憶にありません」「記録がありません」と「冷静に」言ってのけることがある。それで犠牲者がでることが予想されてでもある。
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