先に言及した「記述の理論(記述理論)」は、1905年に、雑誌「マインド」掲載の私の論文「指示について(On Denoting)」のなかで初めて述べられた(ものである)。この説(理論/学説)は、当時の「マインド」の編集者にはとても馬鹿げたものと映ったため、彼は私に再考を求め、そのままで(as it stood)発表することを要求しないようにと懇願してきた。けれども、私はその説(理論)が妥当であること(soundness)を確信していたので、折れること(give way 申し出に従うこと)を断った。この説(理論)は後に一般に受けいれられ、論理学に対する私の最も重要な貢献であると考えられるようになった。
The theory of descriptions, mentioned above, was first set forth in my article 'On Denoting' in Mind, 1905 . This doctrine struck the then editor as so preposterous that he begged me to reconsider it and not to demand its publication as it stood. I, however, was persuaded of its soundness and refused to give way. It was afterwards generally accepted, and came to be thought my most important contribution to logic.
Source: My Philosophical Development, chap. 7:1959.
More info.: https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_07-120.HTM
<寸言>
自然科学の場合は、新しい理論の正否は比較的はっきり決着がつくが、哲学の場合は時間がかかる。思想上の画期的な理論というのはそいうものであろう。