バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 心理学における、現在の過去と未来とに対する関係は,他の領域と同様に,因果関係(注:原因と結果の関係)であり,相互浸透の関係ではない。・・・記憶は過去の存在を延長するものではない,記憶は,過去が影響を及ぼすひとつの方法に過ぎない。

The relations of the present to the past and the future, in psychology as elsewhere, are causal relations, not relations of interpenetration. ... Memory does not prolong the existence of the past ; it is merely one way in which the past has effects.
 Source: Religion and Science, 1935, chapt. 8: Cosmic Purpose
 More info.: https://russell-j.com/beginner/RS1935_08-130.HTM

<寸言>
 物理学では、人間の主観を排して可能な限り客観的に考えることが求められます。ところが、心理学では研究対象が「心」であるため、どうしても主観が介在しやすく、物理学と同じレベルで客観性を追及しようとする人は、そう多くはないように思われます。
 たとえば、「本日のラッセルの言葉」の中にある次の一文:
「Memory does not prolong the existence of the past ; it is merely one way in which the past has effects.(記憶は過去の存在を引き延ばすものではなく、過去が影響を及ぼす一つの方法にすぎない)」 を、みなさんはどのように受け取るでしょうか? 
 私たちはつい、「記憶がある限り、過去は今も自分の中に生きている」と感じがちです。しかし、実際には、記憶内容は時間とともに変化し、時には再構成されることさえあります。つまり、私たちが思い出す「過去の記憶」は、厳密には「現在の脳の中にある記憶」であって。当時そのままの記録ではありまえん。」
 そう考えると、ラッセルが言うように「記憶は過去の持続物ではなく、過去が現在に及ぼす影響の一つの方法にすぎない」という指摘は、心理学においても、より客観的な思考を促す上で、重要なヒントを与えてくれるのではないでしょうか。