『バートランド・ラッセル-反核の論理学者』(学芸みらい社刊)p.80で引用されているラッセルの言葉です。(n.18)
「私は最初、愛を求めた。それは陶酔をもたらすがゆえにである。・・・次に愛を求めたのは、それが寂寥を救ってくれるからだった。・・・最後に私が愛を求めたのは、愛の結合において、聖人や詩人たちが想像してきたような天国の予示的ビジョンを、神秘的縮図のうちに私は見たからであった。・・・。
それと同様の情熱でもって私は知識を探求した。私は人間の心を理解したいと願ってきた。・・・数が万物の流転を支配するというピタゴラス学説の威力を理解すべく努力した。その幾らかを、ほんの少しであるけれども、私はなしとげた。
愛と知識とは、その可能なる限りにおいて、高く天井に達した。しかし常に憐憫の情が私を地上へと引き戻した。人々の苦悩の叫びが反響して、私の胸に響くのである。・・・私は社会悪を減らしたいと切望する。しかし私にはできない。それで私も苦悶する。これが今日までの私の人生である。」
I have sought love, first, because it brings ecstasy ... I have sought it, next, because it relieves loneliness .... I have sought it, finally, because in the union of love I have seen, in a mystic miniature, the prefiguring vision of the heaven that saints and poets have imagined.
With equal passion I have sought knowledge. I have wished to understand the hearts of men. ... And I have tried to apprehend the Pythagorean power by which number holds sway above the flux. A little of this, but not much, I have achieved.
Love and knowldege, so far as they were possible, led upward toward the heavens. But always pity brought me back to earth. Echoes of cries of pain reverberate in my heart. ... I long to alleviate the evil, but I cannot, and I too suffer. This has been my life.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, 1967
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<寸言> 波乱万丈のラッセルの人生。自分の一生を振り返って短文でまとめた結果がこれ。なにげない文章に見えて、ラッセルのなしととげたことを知ってから読むと、この文章のなかにラッセルの偉大な人生が凝集して見えてくる。