バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 天然痘に対する種痘(=天然痘の予防接種)(inoculation against smallpox)は,神学者たち(divines)からはげしい抗議を引き起こした(注:津田氏は divines を牧師たちと訳出)。ソルボンヌ大学は神学的根拠からそれに対し反対意見を公表した。英国国教会のある牧師は説教集を出版し,その中でヨブの出来物(腫れ物)(Job's boils)は疑いもなく悪魔による接種のせいだと言っている。また,多くのスコットランドの牧師たち(ministers)は,種痘は「神の審判をくじこうとする努力である」という宣言(の発表)に加わった。けれども,(種痘の)天然痘による死亡率を低下させる効果(結果)がとても顕著であったので,神学的恐怖もこの病(天然痘)の恐怖を凌駕することは出来なかった。

Inoculation against smallpox aroused a storm of protest from divines. The Sorbonne pronounced against it on theological grounds. One Anglican clergyman published a sermon in which he said that Job's boils were doubtless due to inoculation by the Devil, and many Scottish ministers joined in a manifesto saying that it was "endeavouring to baffle a Divine judgment." However, the effect in diminishing the death-rate from smallpox was so notable that theological terrors failed to outweigh fear of the disease.
 情報源: Religion and Science, 1935, chapt. 4
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/RS1935_04-180.HTM

 <寸言>
 医学の進歩に抵抗し続けてきた宗教。病におかされた人間を治すのは長い間、宗教家や占い師などの専売特許であった。医学も発展のためには死んだ人間だけでなく、生きている人間を解剖することが重要であった。また、伝染病については、公衆衛生の考え方が重要で割、疫学的な研究も重要であった。またそういったもののためには医療器具の発達も必要であった。