これは自由主義的なものの見方と全体主義的なものの見方との間にある本質的な相違であり,前者(自由主義の世界観)は国家の福祉は究極的には個人の福祉(幸福)にあると見なす一方,後者(全体主義の世界観)は国家を目的と見なすとともに個人を単に欠くべからざる国家の成分と見なし,個人の福祉(幸福)は神秘主義的な全体(性) -それは支配者たちの利益を覆いかくすものであるが- に従属しなければならないと考える。
This is the essential difference between the liberal outlook and that of the totalitarian State, that the former regards the welfare of the State as residing ultimately in the welfare of the individual, while the latter regards the State as the end and individuals merely as indispensable ingredients, whose welfare must be subordinated to a mystical totality which is a cloak for the interest of the rulers.
情報源: Power, 1938.
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER18_360.HTM
<寸言>
国民がみんな死んでしまえば国家なんてものはなくなる。支配層だけ残っていれば国家は存続すると強弁する者がいるかも知れないが、生き残った支配層もしだいに野蛮状態になっていくか、あるいは支配層も支配する者と支配される者に分裂していく。そうして支配される側に陥って初めて、国家とは支配者集団のことであり、国家の目的とは支配者集団の目的(欲求)であることがわかる。