哲学者の中には,権力衝動が自らの形而上学を支配するのを許さないが、自らの倫理学においては自分の権力衝動に自由を与える者がいる。そうした哲学者のなかで最重要なのはニーチェであり,彼はキリスト教道徳を奴隷の道徳として拒絶し,その代りに英雄的支配者にふさわしい道徳を置いている。・・・彼の見解によれば,民衆(俗衆)は,自分たちだけでは価値をもたず,ただ英雄の偉大さに対する手段としてのみ価値をもつものであり,英雄は,もしも民衆(俗衆)に危害を加えることによって自己啓発を推し進めることができるのであれば、それをする権利を有している(という)。
Some philosophers do not allow their power impulses to dominate their metaphysics, but give them free rein in ethics. Of these, the most important is Nietzsche, who rejects Christian morality as that of slaves, and supplies in its place a morality suitable to heroic rulers. ,, In his view, the herd have no value on their own account, but only as means to the greatness of the hero, who has a right to inflict injury upon them if thereby he can further his own self-developnent.
情報源: Power, 1938.
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER16_070.HTM
<寸言>
日本にはニーチェファンが多いが,ニーチェの倫理思想や倫理哲学のあやうさをどれだけの人が理解あるいは気づいているだろうか?