権力道徳(権力に纏わる道徳)の最も明らかな例は,従順(服従)を教え込むこと(inculcation)である。従順(服従)は,子供が親に,妻が夫に,召使い(使用人)が主人に,臣民が王侯に,そして(宗教に関しては)俗人が聖職者(priests)に,従う義務である(というよりも,むしろ,義務であった)。また,かつての軍隊や修道会(religious orders)には,もっと特殊な形の服従の義務があった。これらの義務にはいずれも長い歴史があり,それらはそれぞれが関係する制度の歴史と並走しているのである。
The most obvious example of power-morality is the inculcation of obedience. It is (or rather was) the duty of children to submit to parents, wives to husbands, servants to masters, subjects to princes, and (in religious matters) laymen to priests; there were also more specialized duties of obedience in armies and religious orders. Each of these duties has a long history, running parallel with that of the institution concerned.
情報源: Power, 1938.
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER15_020.HTM
<寸言>
奴隷や被抑圧者が従うべき道徳ということで、「奴隷道徳」とも言われる。しかし、「奴隷道徳」に従う人たちに「奴隷道徳」と感じさせてはならない。そう、奴隷状態の人間がそういった道徳と積極的に求めるようにすることが権力者にとって肝要となる。権力者の意向を常に忖度するようになれば「完成」となる。