彼はとても不幸なので,似たような罪を彼ほどうまく隠しおおせなかった人々を罰することで世間に復讐しようととする(注:自分は細心の注意をはらってわからないようにやっているのにあいつは堂々とやっている/あいつを処罰すべきだ,といった感情)。子供のころに嘘をつくことに慣れたので,大人になっても平気で嘘をつくようになる。こうして,彼は,両親が判断を誤って子供を自分たちの考える道徳的な人間にしようと試みた結果,病的に内向的な偽善者でありかつ迫害者になる。
Being profoundly unhappy, he seeks to avenge himself on the world by punishing those who have been less successful than himself in concealing a similar guilt. Being accustomed to deceit as a child, he finds no difficulty in practising it in later life. Thus he becomes a morbidly introverted hypocrite and persecutor as a result of his parents' ill-judged attempt to make him what they consider virtuous.
情報源: Bertrand Russell :Marriage and Morals, 1929
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM19-030.HTM
<寸言>
本当のことを言わないことと嘘をつくこととは雲泥の差がある。上に立つものはいいたくても言えないことはいろいろあるであろう。そこをうまくやるのが上に立つものの条件となる。「由らしむべし知らしむべからず」(=いろいろ情報を与えても一般民衆は理解できずさわぐことが多いので、できるだけ余分な情報を与えるのはやめておこう)の精神に立つ政治家が多すぎる。ある程度は仕方ないにしても、嘘を平気でつくような政治家はごめんである。