他方,親の愛情は,それが正しい種類のものである時には,疑いもなく,子供の発達を助長する。母親が温かい愛情を感じない子供(母親から温かい愛情を注いてもらえない子供)は,痩せがちで,神経質になりがちであり,時には盗癖のような欠陥を発達させる。親の愛情は,この危険な世界にあっても自分は安全だという感じを子供に抱かせ,いろいろ実験したり,自分の周囲の環境を探検したりする時に,大胆さを与える。子供の精神生活にとって,自分が温かい愛情の対象になっていると感じることが必要である。なぜなら,子供は本能的に自分が無力であることを,また,自分がどれほど保護を必要としているかを,そしてその保護は愛情のみが確保してくれるということを気づいているからである。
On the other hand, parental affection, when it is of the right sort, undoubtedly furthers a child's development. Children whose mothers do not feel a warm affection for them are apt to be thin and nervous, and sometimes they develop such faults as kleptomania. The affection of parents makes infants feel safe in this dangerous world, and gives them boldness in experimentation and in exploration of their environment. It is necessary to a child's mental life to feel himself the object of warm affection, for he is instinctively aware of his helplessness, and of his need of a protection which only affection can ensure.
情報源: Bertrand Russell :Marriage and Morals, 1929
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM14-040.HTM
<寸言>
貧しい時代には親は働き詰めで子供のために余り時間をさくことができなかった(また現在でも貧しければできない)。しかし、多くの人が豊かになった現代にあっては、より多くの時間を子供のためにさくことが「可能」である。にもかかわらず、より多くの収入をもらうために残業にあけくれたり、専業主婦であってもスマホばかり見続けて子供にあまり話しかけない母親も少なくない。男女とも子供が産まれれば自動的に父親や母親になれるわけではない。子供をうまく扱い、成長させるためにはいろいろ子育てを学ぶ必要があり、親は子供とともに育っていく。そのことに気づくのが遅いと、「子育てに失敗した」となげき、子育てに手を抜いたことによる報いを受けることになる。