現代の結婚(結婚生活)にはもうひとつ別の困難があるが,それは,恋愛の価値を一番よく知っている人びとが特に痛感しているものである。恋愛は,自由で自発的である場合にしか栄えることはできない。従って,恋愛は,義務として考えるときには損なわれがちである。誰それを愛するのはあなたの義務であると言えば(言われれば),確実に,あなたはその人(彼あるいは彼女)のことが嫌いになってしまう(であろう)。恋愛に法律のかせ(束縛)を結びつけるものとしての結婚は,このようにして,あぶはち取らずに終わる(falls between two stools 二兎を追って一兎も得ず)ということになるのである。
There is another difficulty in the way of modern marriage, which is felt especially by those who are most conscious of the value of love. Love can only flourish as long as it is free and spontaneous; it tends to be killed by the thought that it is a duty. To say that it is your duty to love so-and-so is the surest way to cause you to hate him or her. Marriage as a combination of love with legal bonds thus falls between two stools.
情報源: Bertrand Russell :Marriage and Morals, 1929
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM10-100.HTM
<寸言>
恋愛感情は無政府的。結婚(制度)は無政府的な異性愛を法律によって規制をする。子供がいる場合にはこの規制が必要であるが、子供がいなくてお互い経済的に独立している場合にはその規制は「束縛」「足かせ」となる。キリスト教では愛する「義務」が説かれるがそれは愛ではないというか、「義務」だとされるやいなや恋愛感情はしぼんでゆく。