バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 祖先崇拝,あるいはそれに類似したものは,非常に広範囲に行われていた。キリスト教の宗教理念(思想)には,すでに見たように,父性の威厳が充満している。君主制や貴族制度の社会組織や相続制度は,どこを見ても,(男系の)世襲制度(paternal system)に基づいていた。古代では,経済的動機がこの制度をささえていた。創世記を見ると,男たちがどんなに多くの子孫をほしがっていたか,また,多くの子孫ができると,それがどんなに有利であったかがわかる。息子が殖えることは,羊や牛の群れが殖えることと同様に有利なことであった。それこそが,当時,エホバが人間に「産めよ! 増やせよ!」と命じた理由であった。

Ancestor worship, or something analogous, prevailed very widely. The religious ideas of Christianity, as we have already seen, are impregnated with the majesty of fatherhood. The monarchic and aristocratic organization of society and the system of inheritance were based everywhere upon paternal system. In early days economic motives upheld this system. One sees in Genesis how men desired a numerous progeny, and how advantageous it was to them when they had it. Multiplication of sons was as advantageous as multiplication of flocks and herds. That was why in those days Yahveh ordered men to increase and multiply.
 出典: Bertrand Russell :Marriage and Morals, 1929
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM03-030.HTM

 <寸言>
  人種はいろいろあるが、もとはと言えば「人類はみな兄弟」。アダムとイブの物語の神話を持ち出すまでもなく、人類学,いや,DNAの研究から、そのことがわかる。アフリカでチンパンジーから枝分かれし進化したヒトは、ユーラシア大陸、ベーリング海をへてアメリカ大陸を渡るなどして、世界中に分散していった。白人と黒人とではまったく別の種であるかのように錯覚するが、実際は、長い年月をかけて、気候風土などの影響を受けて変わっていったにすぎない。
 世界中で王権神授説的な話が創作され、支配者の権力は神から与えられたものだという偽装が行われてきた。日本でも同様にして天皇制が創られた。しかし、科学が進んだ現代でも、人類は神によって創造されたのであり、自分たちは選ばれた民族だと信じたい人々がけっこういる。米国では進化論を信じないひとがけっこういるし、日本では天皇をいまだ神格化するとともに、日本民族は最優秀の民族であり、世界を支配する権利や義務があると思っている人さえ存在している。