もしも人間の希望や願望が,自分自身や自分の家族や自国や自分が所属する階級や,自分と信条を同じくする者に限定されるならば,あらゆる愛情やあらゆる親切心は嫌悪や敵意の感情と並行していると気づくであろう。人間の感情におけるこのような二重性から,人間生活におけるほとんどすべての悪徳ーー(即ち)残忍,抑圧,迫害,戦争--が起こるのである。我々の世界が世界をおびやかす障害を逃れるためには,人間は同情(思いやり)の及ぶ範囲の制限をより少なくする(同情の範囲をより広げる)ことを学ばなければならない。
If your hopes and wishes are confined to yourself, or your family, or your nation, or your class, or the adherents of your creed, you will find that all your affections and all your kindly feelings are paralleled by dislikes and hostile sentiments. From such a duality in men's feelings spring almost all the major evils in human life--cruelties, oppressions, persecutions, and wars. If our world is to escape the disasters which threaten it men must learn to be less circumscribed in their sympathies.
出典: Bertrand Russell: A Philosophy of Our Time (1953)
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1026_PfOT-050.HTM
<寸言>
近年におけるAIやロボットやiPS細胞などの医学・生理学の発達、宇宙への進出の拡大、その他、人類の知(能)の発達は急速のものとなっている。これに対して人間の感情の発達(自分と異なる人間に対する同情心や理解力の発達)はかなり遅れをとっていると言わざるをえない。
その証拠(あらわれ)の一つは、遅れた国である北朝鮮の指導者(金正恩)及び最も進んだ国の指導者(トランプ)の独善性や感情面における狭量性や思いやりのなさは「いい勝負」(似たり寄ったり)である。