今や世界中を通じて見られる経済的ナショナリズムの全哲学は,次のような誤まった信念に基礎をおいている。すなわち一国の経済的利害は必然的に他国のそれと対立するという信念である。この誤まった信念は,国際的な憎悪と対立を生み出すことによって,戦争の原因となり,そうしてみずから(誤った信念)を真ならしめる(真理だと思わせる)傾きをもつ。なぜなら,ひとたび戦争が勃発すれば,国家的利害の衝突はあまりにも現実的なものになるだけだからである。
The whole philosophy of economic nationalism, which is now universal throughout the world, is based upon the false belief that the economic interest of one nation is necessarily opposed to that of another. This false belief, by producing international hatreds and rivalries, is a cause of war, and in this way tends to make itself true, since when war has once broken out the conflict of national interests becomes only too real.
出典: Bertrand Russell: Ideas That Have Harmed Mankind,1946.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0861HARM-100.HTM
<寸言>
競争の利点に対する過信。弱肉強食、力が正義の強者の論理。
America First! の不都合な結果がわかるのは,2,3年後かも知れないが,それがわかった時には,アメリカの世界における地位の相対的低下がはっきりすることであろう。