一方では,所有欲は,後年多くの恐ろしい弊害を生み出す。即ち,貴重な物質的な所有物を失いはしないかという恐れは,政治的及び経済的な残酷さの主な原因の一つである。男性も女性も,できるだけ,個人的(私的な)な所有権に左右されない仕方で,即ち,防御的な活動よりも,むしろ創造的な活動に幸福を見いだすことが望ましい。それゆえ,できるだけ,子供たちに所有の感覚を養わせないほうが賢明である。
On the one hand, the love of property produces many terrible evils in later years ; the fear of losing valued material possessions is one of the main sources of political and economic cruelty. It is desirable that men and women should, as far as possible, find their happiness in ways which are not subject to private ownership, i.e. in creative rather than defensive activities.
出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2:Education of character, chap. 7: Selfishness and property.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE07-040.HTM
<寸言>
子どもにおける所有欲の好ましくない点と尊重すべき点。
子どもの欲しいものを何でも買い与えることは所有欲や物欲を刺激しすぎることになり良くない。それは多くの親が気づいていてそうしないように気をつけても、親以外の者(たとえば、おじいちゃんやおばあちゃん)が甘やかして、親の努力が無駄になったり効果がなくなったりすることはよくある。
所有欲や物欲が強い場合には、それを失うことに対する恐怖心から過度な反応を引き起こしやすい。先祖から一生遊んで暮らせる遺産を受け継いだ場合には、(生活の心配をすることなく)それを活かして世の中のためにつくせば、社会のためにもよいが、実際は遺産を食いつぶすだけで、世の中に何もよいものをもたらさない場合が多い。(そう強く思う場合は、「子孫に美田を残さず」という格言を実行することになる。)
自分が努力して築き上げた財産や創造物(作品、建築物、その他いろいろ)に対する愛着や所有欲は尊重すべきものであるが、そういったものでも、どんどん他人に与え、たえず新しいものを生み出していくことに喜びを見いだせる(創造性を発揮し続けることができる)ことが、その人にとっても社会とっても一番良いであろう。(そのためには、子どもの時から建設的な衝動を養う必要がある。)