翌年の1930年には,『幸福の獲得』(いわゆる『幸福論』)という本を出版した。それは,不幸の気質的な原因を克服するために,社会的・経済的制度の変革によってなしうることに対照するものとして,各個人が何をなしうるかということに関する常識的な助言から成っている本であった。・・・この本が書かれたのは,もし自分が我慢できる程度のいかなる幸福を維持しようとしても,大変な自制心や苦い経験から学んだ多くのことを必要とした,そういった時期だったということである。
In the following year, 1930, I published The Conquest of Happiness, a book consisting of common-sense advice as to what an individual can do to overcome temperamental causes of unhappiness, as opposed to what can be done by changes in social and economic systems. ... What I do know is that the book was written at a time when I needed much self-command and much that I had learned by painful experience if I was to maintain any endurable level of happiness.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, chap. 6: Principia Mathematica, 1967
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB16-090.HTM
<寸言>
そういった意味で,ラッセルにとって,また多くの人にとっても,「幸福」とは向こうからやってくるものではなく,努力して'獲得'するものである。そこで,ラッセルは書名を The Conquest of Happiness としたのである。