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バートランド・ラッセル『反俗評論集-人類の将来』第1章(松下彰良・訳)

* 原著:Bertrand Russell: Unpopular Essays, 1950

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第1章「哲学と政治(1947)」n.9

 プラトンは、ディオゲネス・フエルティウス(Diogenes Laertius)によれば、デモクリトスの著作は全て焼いてしまわなければならないという見解を表明した。プラトンの願望は、デモクリトスの書いたものが現在なにも残っていないことで、十分に満たされた。プラトンは、彼の『対話篇』のなかで、デモクリトスに決して言及しなかった。(これに対し、)アリストテレスはデモクリトスの学説(哲学説)に若干の説明を与えた。 エピキュロスはデモクリトスを俗化(低俗化)した。 そうして、最後に、ルクレティウスはエピキュロスの学説(哲学説)を詩のかたちで表現した。 ルクレティウスの書いたものは、幸いにも、なんとか生き残った。アリストテレスの論争及びルクレティウスの詩から、デモクリトスを再構成することは容易ではない。それはまるで我々が、J. ロックによる(プラトンの)生得的観念の否定とヴォージの「ある夜 、私は永遠を見た」という詩から、プラトンを再構成しようとするようなものである。 それにもかかわらず、(それらの情報から)プラトンの(デモクリトスに対する)憎悪を説明し、それを非難することは十分可能である。

Philosophy and Politics, (1947), n.9

Plato, according to Diogenes Laertius, expressed the view that all the books of Democritus ought to be burnt. His wish was so far fulfilled that none of the writings of Democritus survive. Plato, in his Dialogues, never mentioned him; Aristotle gave some account of his doctrines; Epicurus vulgarized him; and finally Lucretius put the doctrines of Epicurus into verse. Lucretius just survived, by a happy accident. To reconstruct Democritus from the controversy of Aristotle and the poetry of Lucretius is not easy; it is almost as if we had to reconstruct Plato from Locke's refutation of innate ideas and Vaughan's "I saw eternity the other night.” Nevertheless enough can be done to explain and condemn Plato's hatred.

(掲載日:2023.07.30/更新日: )