バートランド・ラッセル『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』- Human Society in Ethics and Politics, 1954
* 原著:Human Society in Ethics and Politics, 1954* 邦訳書:バートランド・ラッセル(著),勝部真長・長谷川鑛平(共訳)『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』(玉川大学出版部,1981年7月刊。268+x pp.)
原著者まえがき n.2 |
Human Society in Ethics and Politics, 1954, Preface |
本書は人間の情熱とそれが人間の運命に及ぼす影響とに終始関心を持っているが、私は、本書が、私がこれまで書いてきたものだけでなく、私と大筋で意見を同じくする人々によって書かれた全ての著作について、誤解を払拭する助けになることを期待している。批評家達は私に対してある種の非難を加えるのを常としているが、その非難は、彼らが私の書くものに相当強い先入観をもって近づき、そのために、実際に私が言っていることに気づくことができないということを示唆しているように思われる。私は、人事における理性の役割を過大評価していると、繰り返し言われている。これは、 批評家達が信じている以上に、人々はより理性的であると私は考えている、あるいは、人々はより理性的であるべきだと私は考えている、ということを意味しているかもしれない。しかし、私は、批評家の側により重大な誤りがあり、私ではなく、批評家たちこそ、理性が演じることが可能な役割を非合理的に過大評価しているのであり しかも、このことは、彼らが「理性」という語の意味するところについて、全く混乱に陥っていることからきている、と私は考える。 |
I hope also that this book, which is concerned throughout with human passions and their effect upon human destiny, may help to dispel a misunderstanding not only of what I have written, but of everything written by those with whom I am in broad agreement. Critics are in the habit of making a certain accusation against me which seems to imply that they approach my writings with a preconception so strong that they are unable to notice what, in fact, I say. I am told over and over again that I over-estimate the part of reason in human affairs. This may mean that I think either that people are, or that they ought to be, more rational than my critics believe them to be. But I think there is a prior error on the part of my critics, which is that they, not I, irrationally over-estimate the part which reason is capable of playing, and this comes I think from the fact that they are in complete confusion as to what the word "reason’’ means. |