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ラッセル関係書籍の検索 ラッセルと20世紀の名文に学ぶ-英文味読の真相39 [佐藤ヒロシ]

バートランド・ラッセル『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』第2部[「情熱の葛藤」- 第2章- Human Society in Ethics and Politics, 1954, Part II, chapter 4

* 原著:Human Society in Ethics and Politics, 1954
* 邦訳書:バートランド・ラッセル(著),勝部真長・長谷川鑛平(共訳)『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』(玉川大学出版部,1981年7月刊。268+x pp.)

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『ヒューマン・ソサエティ』第2部「情熱の葛藤」- 第4章「神話と魔力」n.6

Human Society in Ethics and Politics, 1954, part II: The Conflict of Passions, chapter 4: Myth and Magic, n.6


 これは別の非合理的な信念の源泉と関連している。すなわち、自然界の原因は私たち自身(人間)の欲望や感情に似たものであると考える傾向である。火山の噴火や地震は怒りの表れ(表出)のように見え、それを引き起こしている怒れる精霊(spirit)を想像する。一方で、作物を育てる雨をもたらすのは思いやりのある精霊だと考える(注:A kindly spirit の「kinly」はここでは形容詞として使われており、kind よりも詩的なニュアンスを持っている)。無生物は想像しづらいため、森には木の精霊を、泉には水の妖精(naiads)を住まわせることで、それを理解しやすいものにしている(注:動詞としての「people」は「人でいっぱいにする」という意味があるが、ここでは、「住まわせる」といった意味で使われている)」。 ガリレオの時代まで、物質は、何もしない状態では動き続けられないと考えられていた。。アリストテレスは、惑星が軌道を動き続けるには49柱、あるいは55柱の神々がそれを押し続ける必要があると考えていた。純粋に物理的で自己作用的な因果という概念は非常に近代的なものであり、私たちの想像力を働かせた信念体系の誘惑に抗うことでのみ、少なくともある程度は広まってきたのである。

This is connected with another source of irrational belief: namely, the tendency to think that causes in nature must be something like our own desires and feelings. Eruptions and earthquakes seem like manifestations of anger, and so we imagine an angry spirit which is causing them. A kindly spirit, on the other hand, sends the rain that makes crops grow. Lifeless matter is difficult to imagine, and becomes less puzzling if we people the forest with tree-spirits and the springs with naiads. Until the time of Galileo, it was thought that matter would not keep on moving if left to itself. Aristotle thought that the planets required forty-nine or perhaps fifty-five gods to keep on pushing them in their orbits. The conception of a purely physical, self-acting causation is very modern, and has only prevailed, in so far as it has prevailed, by resisting the solicitations of our imaginative system of beliefs.