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バートランド・ラッセル『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』- Human Society in Ethics and Politics, 1954

* 原著:Human Society in Ethics and Politics, 1954
* 邦訳書:バートランド・ラッセル(著),勝部真長・長谷川鑛平(共訳)『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』(玉川大学出版部,1981年7月刊。268+x pp.)

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『ヒューマン・ソサエティ』第5章:部分的善と一般的善 n.20

Human Society in Ethics and Politics, 1954, chapter 5: Partial and General Goods, n.20


 私達が検討してきた(3つの)理論は、正しい行為とは一般善を促進する可能性が最も高い行為であることを否定する、あるいは否定しているように見える理論に含まれている(属している)。私達が啓蒙的(開明型)帝国主義と呼ぶ第一理論は、実際にはこのような否定はしていない。私たちが啓蒙的帝国主義と呼ぶ第一の帝国主義は、実際にはこのような否定はしていない。この理論は、未来を考慮に入れると、(幸運なことに、この教義を宣言している人物がたまたま属している)ある集団があり、その集団の欲望が満たされれば、他のどの集団の欲望(が満たされる)よりも未来の世代に満足をもたらすだろうというものである。この教義が実際事実であれば、自分達の目的を追求することは一般的な善を追求することであると考えるこの理論の信奉者を正当化することができる。このような理由で、アレクサンダーの東方征服やカエサルのガリア征服を正当化することができる。 白人がアメリカ合衆国のほとんどの領土からインディアンを追放したことも、おそらく正当化できるだろう。この場合、問題はすべて事実の問題であって、理論の問題ではない。私達が関心を持っているのは理論なので、この件に関してはこれ以上言う必要はない。
 

The theories that we have been considering are among those that deny, or seem to deny, that right conduct is that most likely to promote the general good. The first, which we called that of enlightened imperialism, does not really make this denial; it says that, when the future is taken into account, there is one group (to which, by good fortune the person proclaiming the doctrine happens to belong) whose desires, when satisfied, will bring more satisfaction to future generations than those of any other group. This doctrine, when it is true in fact, justifies its adherents in considering that in pursuing their own aims they are pursuing the general good. On such grounds one may justify Alexander’s conquest of the East and Caesar’s conquest of Gaul; perhaps also the white man's expulsion of the Indian from most of the territory of the United States. The whole question, in this case, is one of fact, not of theory, and since it is theory that concerns us we need say no more on this subject.