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バートランド・ラッセル『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』- Human Society in Ethics and Politics, 1954

* 原著:Human Society in Ethics and Politics, 1954
* 邦訳書:バートランド・ラッセル(著),勝部真長・長谷川鑛平(共訳)『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』(玉川大学出版部,1981年7月刊。268+x pp.)

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第2章:道徳規範 n.7

Human Society in Ethics and Politics, 1954, chapter 2: moral codes, n.7


 「不正(間違っている)」に対するものとしての「正義/公正(正しい)」は、もともとは、権力と結びついた概念であり、服従の義務のない人々の主導権に関係する概念である。王は、「主の眼の前では正しい行為をする」べきである。あらゆる種類の官職や職業にも、また、権力が付与されているあらゆる地位にも(注:王の持つ権力や権限の一部を与えられた地位・役職)、常に、同様の積極的義務がある。兵士は闘わなくてはならないし、消防士は生命を賭して燃えている家から人々を救い出さなければならないし、救命艇の乗組員は嵐の海に乗り出さなくてはならないし、医者は疫病に感染する危険を冒さなければならないし、父親は子供に食物を用意するために合法的なことならなんでもしなければならない。 (注:王が全体的権力を持っており、その一部の権力が様々の職業の人々に与えられている、ということ
 
"Right", as opposed to "wrong", is originally a conception connected with power, and having to do with the initiative of those who are not bound to obedience. Kings should "do right in the sight of the Lord". There is something of the same kind of positive duty in the case of every kind of office or profession, and indeed of every position that gives power. Soldiers must fight, firemen must risk their lives in saving people from burning houses, lifeboatmen must put to sea in a storm, doctors must risk infection in an epidemic, fathers must do everything lawful to provide food for their children.