
子どもはごまかしを嫌うが、その感情は通常、後年には(歳をとれば)消滅する。子どもに不快な真実を知らせない慣習は、決して大人たちが考えるように、子どものために採用されるのではない。それは、大人自身が卒直さを苦痛に感じるがゆえに採用されるのである。
They (= Children) have a dislike of humbug, which usually disappears in later life. The habit of screening them from the knowledge of disagreeable truths is not adopted for their sakes although adults may think it is; it is adopted because adults themselves find candour painful.
Source: Bertrand Russell: Mortals and Others, v.1, 1975
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<寸言>
現実を教えることによって子どもに不必要な恐怖や不安を抱かせたくないという親心は理解できます。しかし、子どもから質問されたことに対して、子供に現実を知らせたくないために曖昧に答えるのではなく、子どもの成長にあわせ、できるだけ子どもが理解できる仕方で答えてあげたほうがよい、とラッセルはアドバイスしています。これは、子どもが恐怖や不安を感じる前に、現実を少しずつ理解する手助けをしてあげるためです。さらに、ラッセルは、子どもに不快な現実を知らせない慣習は、大人自身が率直さを苦痛に感じるがゆえに採用される場合が少なくないと指摘します。
たとえば、『幸福論』(The Conquest of Happiness, 1930)の中で、ラッセルは次のように述べています。
「恐怖(心)はどのようなものであれ、直視しないことによってよりひどいものになっていく。考えをよそへそらそうと努力すれば、目をそむけようとしている幽霊の恐ろしさが一段と増してくる。あらゆる種類の恐怖に対処する正しい道は、理性的かつ平静に、しかし極力集中的に、その恐怖がすっかり身近なものになるまで考えることである。ついには、なじんでしまうことにより恐ろしさが薄らいでくる。(そうして)その事柄がまったく退屈なものとなり、考えがそこからそれていく。それも、以前のように、意志的に努力したからではなく、ただ、そういう題目に興味がなくなったからである。」
(Every kind of fears grows worse by not being looked at. The effort of turning away one's thoughts is a tribute to the horribleness of the spectre from which one is averting one's gaze; the proper course with every kind of fear is to think about it rationally and calmly, but with great concentration, until it has become completely familiar. In the end familiarity will blunt its terrors; the whole subject will become boring, and our thoughts will turn away from it, not, as formerly, by an effort of will, but through mere lack of interest in the topic.
Source: The Conquest of Happiness, 1930, chap.5: Fatigue)
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