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バートランド・ラッセル 宗教と科学 第10章
科学技術の直接的影響(松下彰良 訳)

Religion and Science, 1935, by Bertrand Russell

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第10章 結論 n.2

 科学技術の直接的影響もまた,全て有益だったということは決してなかった。一方では、それは武器(兵器)の破壊力を増し、また、平和産業から,戦闘(戦争)や軍需品(munitions)の製造のためにさくことができる人口(国民)の割合を増加させた。(訳注_「spare A B /spare B for A」:A(人・目的など)のためにB(物・時間など)をさく,分けてやる;とっておく/荒地出版社刊の津田訳では「・・・余分な人口を平和産業から戦闘や軍需産業に向けた」となっており、increased が「 the proportion of the population 」にもかかっていることを無視するだけでなく意味内容においても誤訳している。)。他方、労働生産性を増すことによって、それ(科学技術の直接的影響)は欠乏に依拠する古い経済組織が機能することを非常に困難にし、また,それは新思想の激しい衝撃により,古い文明のバランスを失わせ、中国を混乱に陥れ、日本を西洋を模範とした非情な帝国主義へと駆り立て、ロシアを新しい経済体制を樹立するための激しい試みをさせ、ドイツを古い経済体制を維持するための激しい試みへと駆り立てた(のである)。(訳注:throw a person off balance:人の平衡をくずす、倒す、人をあわてさせる) 今日の(我々の時代の)これらの害悪は全て,一部は科学技術に起因するものでああり、従って結局は、(科学技術の生みの親である)科学に起因するものである。

 科学とキリスト教神学との戦い(warfare 交戦状態)は、時々前哨地で(on the outposts)小競り合い(skirmish )は生じているにもかかわらず、今日ではほとんど終っており,そして、ほとんどのキリスト教徒が、それ(科学とキリスト教神学との戦い)によって自分たちの宗教がよりよくなっていることを認めるだろう,と私は考える(their religion is the better for it,)。キリスト教は、野蛮時代から受け継いだ枝葉末節の不必要なもの(inessentials)を純化し、迫害をしようという欲求をほとんど取り除いている(cure of 治癒する,悪いところをとりのぞく)。そうして、よりリベラルなキリスト教徒の間には、価値のある一つの倫理説がいまだ残っている。即ち、'隣人を愛すべし’というキリストの教えが残るとともに、たとえもはや魂とは呼ばれないとしても,全ての個人の中に尊敬に値するものがあるという信念が,残っている。また、キリスト教会には、キリスト教徒は戦争に反対すべきであるという,成長しつつある信念が存在している。

 しかし、古い宗教がこのようにして多くの点で有益になっている一方、新しい宗教が、他人を迫害したいという,精力的な若者の熱意を全て携えて、ガレリオ時代における異端審問所を特徴づけたのと同じくらい大規模に,科学に進んで反対しようと,出現してきている。もし仮に、ドイツ(注:ヒトラー政権下)においてキリストはユダヤ人であったと主張し、ロシアにおいて原子はその実体性を失い単なる出来事(事象)の連続にすぎないと主張するなら(注:共産主義は唯物論にたっているので政治的には物質の存在を否定しにくい)、非常に厳しく罰せられがちである。 多分、その処罰は法的なものであるよりも経済的なものだろうが、それだからといって決してより緩やかな処罰だということにはならない。ドイツやロシアにおける知識人の迫害は、その過酷さにおいて、過去250年間にキリスト教会によって行なわれたいかなるもの「処罰)をも凌いできている(上回っている)。

Chapter 10: Conclusion, n.2

The direct effects of scientific technique, also, have been by no means wholly beneficial. On the one hand, they have increased the destructiveness of weapons of war, and the proportion of the population that can be spared from peaceful industry for fighting and the manufacture of munitions. On the other hand, by increasing the productivity of labour they have made the old economic system, which depended upon scarcity, very difficult to work, and by the violent impact of new ideas they have thrown ancient civilizations off their balance, driving China into chaos and Japan into ruthless imperialism on the Western model, Russia into a violent attempt to establish a new economic system, and Germany into a violent attempt to maintain the old one. These evils of our time are all due in part to scientific technique, and therefore ultimately to science.

The warfare between science and Christian theology, in spite of an occasional skirmish on the outposts, is nearly ended, and I think most Christians would admit that their religion is the better for it. Christianity has been purified of inessentials inherited from a barbarous age, and nearly cured of the desire to persecute. There remains, among the more liberal Christians, an ethical doctrine which is valuable : acceptance of Christ's teaching that we should love our neighbours, and a belief that in each individual there is something deserving of respect, even if it is no longer to be called a soul. There is also, in the Churches, a growing belief that Christians should oppose war.

But while the older religion has thus become purified and in many ways beneficial, new religions have arisen, with all the persecuting zeal of vigorous youth, and with as great a readiness to oppose science as characterized the Inquisition in the time of Galileo. If you maintain in Germany that Christ was a Jew, or in Russia that the atom has lost its substantiality and become a mere series of events, you are liable to very severe punishment - perhaps nominally economic rather than legal, but none the milder on that account. The persecution of intellectuals in Germany and Russia has surpassed, in severity, anything perpetrated by the Churches during the last two hundred and fifty years.
(掲載日:2019.03.01/更新日: )