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バートランド・ラッセル宗教と科学 第3章
信仰心が厚いニュートン(松下彰良 訳)

Religion and Science, 1935, by Bertrand Russell

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第3章 進化 n.4


ラッセルの言葉366
 科学はこのような狭い枠(枠組み)の中に閉じこもることが求められ(be expected 期待され),我々が見ることのできる世界が存在した時間(の経過)が六千年間では短かすぎると考えた人々はそしられた(were held up to obloquy)(注:紀元前4004年に創造されたというなら現在までに約6,000年経過していることになる)。(そのような発言をしても)もはや,彼らは焼かれることも投獄されることもなかったが,神学者たちはそのような説を唱える者たちの生活を不幸にし,彼らの説の普及を妨げるためにあらゆる手段をこうじた。

 ニュートンの著作は −(当時)コペルニクス説(地動説)もすでに受け入れられていたので− キリスト教正統派の信仰を動揺させるような役割を果たすことは何もなかった。ニュートン自身は深い宗教心の持主であり,聖書の言葉が霊感に充ちていること(注:the verbal inspiration of the Bible 聖書の霊感が思想だけではなく,聖書の全ての言葉にみなぎっているという逐語霊感説)を信じていた。ニュートン(の考えた)宇宙は,発展が存在するようなもの(宇宙)ではなく,彼の教えとして現われている限りでは(for aught that appeared in his teaching),多分,全てが一度に創造されたと考えてよいだろう。惑星が太陽の上に落ちるのを防ぐ惑星の接線速度(注:tangential velocity: 天体を観測したときの視線に垂直な速度成分のこと。これに対し,天体の移動を速度で表現したものの内、観測者の視線方向(奥行き方向)に沿った速度成分のことを視線速度 radial velocity と言う)を説明するために、彼はそれらの天体が,最初に神の手によって放り投げられたと想定した(考えた)。そうしてその後に起ったことは万有引力の法則によって説明された(注:従って,ニュートンにとっては,神に対する信仰と物理学とは矛盾しないことになる)。確かに,ベントリへの私信において,ニュートンは太陽系が原始的なほぼ一様な物質分布(の状態)から発達できたであろう方法(行程)について示唆している。しかし,彼が公的あるいは公式に発表した限りでは,周知のように,現在我々が知っている太陽や惑星が突然創造されたという考えを好んでいたとともに,宇宙進化を考える余地をまったくないままにしたように,思われる。

Chapter 3: Evolution, n.4


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Within this narrow framework science was expected to confine itself, and those who thought 6,000 years too short a time for the existence of the visible universe were held up to obloquy. They could no longer be burned or imprisoned, but theologians did everything possible to make their lives unhappy and to prevent the spread of their doctrines.

Newton's work -- the Copernican system having been accepted -- did nothing to shake religious orthodoxy. He was himself a deeply religious man, and a believer in the verbal inspiration of the Bible. His universe was not one in which there was development, and might well, for aught that appeared in his teaching, have been created all of a piece. To account for the tangential velocities of the planets, which prevent them from falling into the sun, he supposed that, initially, they had been hurled by the hand of God ; what had happened since was accounted for by the law of gravitation. It is true that, in a private letter to Bentley, Newton suggested a way in which the solar system could have developed from a primitive nearly uniform distribution of matter ; but so far as his public and official utterances were concerned, he seemed to favour a sudden creation of the sun and planets as we know them, and to leave no room for cosmic evolution.
(掲載日:2018.08.09/更新日: )