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バートランド・ラッセル 権力 第18章 (松下 訳)- Power, 1938, by Bertrand Russell

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第18章 権力を手懐けること, n.16 - 社会主義の信条と少数独裁

 


ラッセルの言葉366
 政治運動としての社会主義は,諸産業の賃金労働者の利益を促進することを目指してきた。社会主義の技術的な強み(長所)は,比較的人目につかないままとなってきた。社会主義の信条は,民間資本家の経済的権力は彼らが貸金労働者を抑圧することを可能にするということであり,貸金労働者は,昔の手工業者のように,個人的に自らの生産手段を所有することはできないので,貸金労働者を解放する唯一の道(方法)は,労働者全体による(生産手段の)集団所有以外にはない,というものである。(また)民間の資本家が(生産手段や資本などを)没収されるならば,労働者の全体が国家を構成することになるだろうと,また,その結果,経済的権力の問題は,土地と資本の国有化によって完全に解決できるが,それ以外の方法では解決できない,と論じられている(主張されている)。これは,経済的権力を手懐けるための一つの提案であり,従って,我々の当面の議論の範囲内のものである(within the purview of ~の範囲内)。
 この論拠(議論)を吟味する前に,これ(労働者全体による土地と資本の国有化)が十分に守られ拡大されるならば妥当(な論拠)であると考えると,率直に言いたい。これに反して,そのように(労働者全体による土地と資本の国有化が)守られ,拡充されることがなければ,それは非常に危険なものであると考えるものであり,経済的暴政からの解放を求める人々を完全に誤り導いて,経済的であるとともに政治的な新しい暴政を,これまでに知られているいかなるものよりも激烈なしかも恐るべき暴政を、自分たちがうっかり(注:inadvertently 不注意にも)打ち樹ててしまっていることに気づくということもありそうだと,私は考える(注:つまり,労働者全体による政治を目指したつもりが,少数独裁者が支配する共産主義国のようになってしまう危険性があるということ)。このような新しい暴政は,今までに知られているどのような暴政より,激烈なしかも恐るべきものである。

Chapter 18: The taming of Power, n.16

II


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Socialism as a political movement has aimed at furthering the interests of industrial wage-earners; its technical advantages have been kept comparatively in the background. The belief is that the economic power of the private capitalist enables him to oppress the wage-earner, and that, since the wage-earner cannot, like the handicraftsman of former times, individually own his means of production, the only way of emancipating him is collective ownership by the whole body of workers. It is argued that, if the private capitalist were expropriated, the whole body of the workers would constitute the State ; and that, consequently, the problem of economic power can be solved completely by State ownership of land and capital, and in no other way. This is a proposal for the taming of economic power, and therefore comes within the purview of our present discussion.

Before examining the argument, I wish to say unequivocally that I consider it valid, provided it is adequately safeguarded and amplified. Per contra, in the absence of such safeguarding and amplifying I consider it very dangerous, and likely to mislead those who seek liberation from economic tyranny so completely that they will find they have inadvertently established a new tyranny at once economic and political, more drastic and more terrible than any previously known.
(掲載日:2018.05.24/更新日: )