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バートランド・ラッセル 権力 第17章 - Power, 1938, by Bertrand Russell

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第17章 権力の倫理学, n.13 - 共存できる欲求と共存できない欲求


ラッセルの言葉366
 論理的に(考えると),欲求(欲望)の対象には,全ての人々が享受できるものがある一方,その性質上,社会(共同体)の一部に限定されなければならないものがある。少し合理的な協力が伴えば,全ての人々がそこそこ裕福であること(注:well off 裕福な/良い生活を送る)は可能であるであろうが,しかし、全ての人々が自分の隣人よりも金持であることの喜びを持つことは不可能である。全ての人々は,ある程度,自分で方向づけをすることができるが(注:self-direction 自ら方向を決定すること),しかし全ての人々が,他人に対して独裁者になることは不可能である。もしかすると(Perhhaps)いずれ,(ある地域の)全住民(population)の誰もがそこそこ知的であることがあるかもしれないが,しかし,例外的に知的な人たちに与えられる報酬を全ての人々が確保することは不可能である(注:知的というのは相対的な概念にすぎず,富も無限にあるわけではないため)、等々。

 社会的な協力は,万人(共通)のものになりうる善きものに関しては,可能である。(その善きものというのは)たとえば,十分な物質的福祉(well-being 満足な生活状態),健康,知性,及び,他人より優れていることに依らない(依存しない)あらゆる形態の幸福である。しかし,競争における勝利に依存する(から成り立つ)幸福の種々の形態は,普遍的なもの(万人のもの)になりえない。前者の幸福は,友好的な感情によって促進され,後者(及びそれに相関する不幸)は,非友好的な感情によって促進される。非友好的な感情は,幸福の合理的な追求を完全に阻害する可能性がある。そのような事態は,現在,国家間の経済関係に関わることにおいて,生じている。ここに友好的感情が優勢である(一定地域の)住民(全住民)があるとすれば(Given 存在していると仮定すると),個人同士の利害集団同士の利害の間にはまったく衝突はないであろう。(即ち)現在見られる衝突は,非友好的な感情によって引き起されているものであり,衝突は(次の)衝突を激しくさせている。イングランドとスコットランドは,お互い,何世紀も戦った。ついに,相続という偶然の出来事によって,同じ王(国王)を戴く身となり,そうして,戦いは終わった。誰もがその(戦いの終焉)でより幸福であった。その結果は,ジョンソン博士でさえより幸福であった。ジョンソン博士は自分の冗談によって,戦いに勝ってえられるよりもより大きな喜びを得られた(与えられた)ことに疑いはない。

Chapter 17: The Ethics of Power, n.13

Some objects of desire are such as can, logically, be enjoyed by all, while others must, by their very nature, be confined to a portion of the community. All might -- with a little rational co-operation -- be fairly well off, but it is impossible for all to enjoy the pleasure of being richer than their neighbours. All can enjoy a certain degree of self-direction, but it is impossible for all to be dictators over others. Perhaps in time there will be a population in which everybody is fairly intelligent, but it is not possible for all to secure the rewards bestowed on exceptional intelligence. And so on.

Social co-operation is possible in regard to the good things that are capable of being universal -- adequate material well-being, health, intelligence, and every form of happiness which does not consist in superiority to others. But the forms of happiness which consist of victory in a competition cannot be universal. The former kind of happiness is promoted by friendly feeling, the latter (and its correlative unhappiness) by unfriendly feeling. Unfriendly feeling can wholly inhibit the rational pursuit of happiness; it does so at present in what concerns the economic relations of nations. Given a population in which friendly feelings preponderate, there will be no clash between the interests of different individuals or different groups ; the clashes which at present exist are caused by unfriendly feeling, which they in turn intensify. England and Scotland fought each other for centuries; at last, by an accident of inheritance, they came to have the same king, and the wars ceased. Everybody was happier in consequence, even Dr. Johnson, whose jests doubtless afforded him more pleasure than he would have derived from victorious battles.
(掲載日:2018.04.27 /更新日: )