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バートランド・ラッセル 結婚論 第11章 売春 売春 n.2(松下 訳) - Marriage and Morals, 1929, by Bertrand Russell

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日陰者としての売春婦(娼婦)

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 売春(制度)の必要(性)は,次のような事実から生じる。(即ち)多くの男性は未婚(まだ独身)でいるか,あるいは,旅行中は妻のもとを離れているということ(事実),それから,そういう男性は性欲を抑え続けることで満足しないこと(事実),また,因習的に道徳的な社会においては,ちゃんとした女性は自分の自由にできない( 手に入らない)ということ(事実)から生じる。そこで(それゆえ),社会は,男性の欲求(必要性)を満たすためにある一定の階級の女性を別に取っておく(のである)。男性は,そういう欲望を認めるのは恥ずかしいけれども,さりとて(注:yet しかしそうは言っても),まったく満足させないでおくのもいやなのである。
 売春婦(娼婦)には,次のような利点がある。即ち,すぐに利用できるばかりではなく,その職業以外の生活がないから(注:通常、他に仕事をもっていないし、子どももいない),苦もなく(売春をしていることを)隠しておけるし,売春婦(娼婦)と一緒に過ごした男性は(be with her),体面(威厳)を傷つけないで,(情事をした後で)妻や,家族や,教会に戻っていくことができる(のである)。けれども,売春婦(娼婦)は,あわれにも,疑う余地のない奉仕を行っているにもかかわらず,また,妻や娘の貞操や,教区委員(churchwardens)の見かけだけの美徳を守っているにもかかわらず,誰からも軽蔑され,世間からのはみ出し者(outcast 追放者)と思われ,商売による他は,普通の人たちとつきあうことが許されない。この明白な不公平(不正義)は,(西欧においては)キリスト教の勝利とともに始まり,その後(現在まで)ずっと続いている。売春婦(娼婦)の真(本当)の攻撃は,彼女たち(の存在そのもの)が道徳家の職業のむなしさをあばくことである。(フロイトの言う)潜在意識(検閲官)によって抑圧された思考のように,売春婦(娼婦)は無意識の領域に追放されなければならない(のである)。けれども,そこから(Thence),こうした追放者がそうするように,売春婦(娼婦)は,意図しない形で,復讐をする(のである)。
だが 最もしばしば(ロンドンの)真夜中の路上で私が聞くのは
生まれたばかりの乳飲み子の涙を枯らし
結婚の霊柩車(れいきゅうしゃ)を疫病で台無しにする
年若い娼婦の呪い声
(注:出典が示されていないが、英国人ならみんな知っている W. Blake の詩「London」からの引用だからか?)
http://pb-music.sakura.ne.jp/PoetBlake.htm

Chapter XI: Prostitution, n.2

The need for prostitution arises from the fact that many men are either unmarried or away from their wives on journeys, that such men are not content to remain continent, and that in a conventionally virtuous community they do not find respectable women available. Society therefore sets apart a certain class of women for the satisfaction of those masculine needs which it is ashamed to acknowledge yet afraid to leave wholly unsatisfied. The prostitute has the advantage, not only that she is available at a moment's notice, but that, having no life outside her profession, she can remain hidden without difficulty, and the man who has been with her can return to his wife, his family, and his church with unimpaired dignity. She, however, poor woman, in spite of the undoubted service she performs, in spite of the fact that she safeguards the virtue of wives and daughters and the apparent virtue of churchwardens, is universally despised, thought to be an outcast, and not allowed to associate with ordinary people except in the way of business. This blazing injustice began with the victory of the Christian religion, and has been continued ever since. The real offence of the prostitute is that she shows up the hollowness of moralistic professions. Like the thoughts repressed by the Freudian censor, she must be banished into the unconscious. Thence, however, as such exiles will, she wreaks an unintended vengeance.
But most, through midnight streets I hear
How the youthful harlot's curse
Blasts the new-born infant's tear
And blights with plagues the marriage-hearse.
(掲載日:2016.09.25 /更新日: )