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バートランド・ラッセル 結婚論 第5章 キリスト教倫理 n.12(松下 訳) - Marriage and Morals, 1929, by Bertrand Russell

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女性の隷属化とキリスト教倫理

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 キリスト教倫理は、性的な美徳の強調を通して(性に関する美徳を強調したことにより)、必然的に女性の地位をひどく低下させてしまった。道学者(モラリスト/道徳を説く者)は男性であったので、女性は誘惑者に思われた。もしも、道学者が女性であったなら、男性がこの役割(誘惑者の役割)を受け持ったことであろう。女性は誘惑者であったので、男性を誘惑する機会を減らす(切り詰める)ことが望ましかった。その結果、尊敬すべき(立派な)女性は、種々の制約でいっそう行動を束縛された一方、尊敬されない(身分の低い/立派とは言えない)女性は、罪深い者とみなされ、最大限侮蔑的な扱いを受けた。 女性たちがローマ帝国で(ローマ帝国時代に)享受していた程度の自由を回復したのは、まったく近代(現代)になってからにすぎない。家父長制度は、先に見たように、女性を隷属化させるのに大きく貢献したが、その大部分は、キリスト教の台頭直前に帳消し(undone)にされていたのである。コンスタンティヌス皇帝以後、女性の自由は、女性を罪から守るという口実のもとに、ふたたび切り詰められてしまった。女性が自分たちの自由を取り戻しはじめたのは、近代(現代)になって、罪の観念が衰えてからのことである。

Chapter V Christian Ethics

The Christian ethics inevitably, through the emphasis laid upon sexual virtue, did a great deal to degrade the position of women. Since the moralists were men, woman appeared as the temptress ; if they had been women, man would have had this role. Since woman was the temptress, it was desirable to curtail her opportunities for leading men into temptation ; consequently respectable women were more hedged about with restrictions, while the women who were not respectable, being regarded as sinful, were treated with the utmost contumely. It is only in quite modern times that women have regained the degree of freedom which they enjoyed in the Roman Empire. The patriarchal system, as we saw, did much to enslave women, but a great deal of this was undone just before the rise of Christianity. After Constantine, women's freedom was again curtailed under the pretence of protecting them from sin. It is only with the decay of the notion of sin in modern times that women have begun to regain their freedom.
(掲載日:2016.07.06/更新日: )