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バートランド・ラッセル 結婚論 序論 n4 - (松下 訳) - Marriage and Morals, 1929, by Bertrand Russell

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序論 - 家族に対する性倫理の影響


ラッセル著書解題
 次に来る(突き当たる)のは、家族(に対する性倫理の影響)の問題である。様々な時代と場所において、多くの異なった種類の家族集団が存在してきたが、家父長制家族が非常に広範囲に優位であり、さらに、しだいに一夫一婦的な家父長制家族一夫多妻的な家父長制家族に対してますます優勢になってきている。キリスト教以前の時代以降,西欧文明の中に存在してきた性倫理の主要な動機は、家父長制家族の存立を不可能にしない程度に、女性の道徳的美点(貞淑さ)を確保することであった。なぜなら,(婚外における性交を禁止しておかないと)父性(誰がその子供の父親か)に確信が持てないからである。(注:当時は,男性の精子によって女性の卵子が受精するということは知られていいなかった。)キリスト教によって、この女性の道徳的美点(女性の貞淑)に、男性の道徳的美点(男性の貞淑)の強調という面(点)で付け加えられてきたものには、心理的に言って,禁欲主義がその源泉があった。もっとも、ごく最近では、この動機は女性の解放とともに強くなった女性の嫉妬(心)によって強化されてきている。けれども、後者の動機は、一時的なもののように思われる。なぜなら、もしも、うわべだけで判断してよいものなら、女性(たち)は、これまで女性だけがこうむってきた(我慢してきた)制限を男性にも課する制度よりも、むしろ、両性に自由を認めるような制度をより好む(選ぶ)だろうと思われるからである。

Introduction

We come next to the question of the family. There have existed in various times and places many different kinds of family groups, but the patriarchal family has a very large preponderance, and, moreover, the monogamic patriarchal family has prevailed more and more over the polygamic. The primary motives of sexual ethics as they have existed in Western civilisation since pre-Christian times has been to secure that degree of female virtue without which the patriarchal family becomes impossible, since paternity is uncertain. What has been added to this in the way of insistence on male virtue by Christianity had its psychological source in asceticism, although in quite recent times this motive has been reinforced by female jealousy, which became potent with the emancipation of women. This latter motive seems, however, to be temporary, since, if we may judge by appearances, women will tend to prefer a system allowing freedom to both sexes rather than one imposing upon men the restrictions which hitherto have been suffered only by women.


(掲載日:2016.05.26/更新日: )