バートランド・ラッセル自伝の誤訳
*『ラッセル自伝』(松下彰良・訳): 冒頭 / 目次The Autobiography of Bertrand Russell, 3 vols.(1967~1969) の日高一輝氏による邦訳(『ラッセル自叙伝』)には各ページに必ずといってよいほど誤訳があります。しかし、日高氏の誤訳を全て網羅的に指摘することは煩雑であり、それほど生産的な作業でもありません。そこで、以下、ご紹介したいもののみ、誤訳と思われるところを適宜列挙させていただきます。(掲載開始:2010年8月10日/中断中!)
誤解があるといけませんが、このページでの誤訳の指摘は、誤訳を指摘して面白がったり得意がったりすることに目的があるのではありません。『ラッセル自伝』(The Autobiography of Bertrand Russell)は、非常に重要かつ貴重な著作だと思いますので、できるだけ多くの人に読んでいただきたいと考えています。しかし残念ながら、日高一輝氏による邦訳書が40年以上前に出版されただけであり、その後新訳はだされていません。原文でスラスラ読める方はそうしていただければよいですが、そうでない方々にも幅広く読んでいただきたいと思っています。そこで、微力ながら、ホームページ上で松下訳を公開させていただいたしだいです。
もちろん私の邦訳にもいろいろ誤訳があるものと思われます。松下訳のなかに誤訳や不適切な訳を発見された方は、お手数ですが、松下宛()ご連絡ください。
なお、コンパクトにまとめるために、日高一輝・訳(日本語原文)は掲載していません。日高一輝(訳)『ラッセル自叙伝』(理想社刊)については、図書館で借りるか、アマゾンなどでご購入ください。
出典:ラッセル自伝』第1巻 https://russell-j.com/beginner/AB11-100.HTM
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- 出典:『ラッセル自伝』第1巻 https://russell-j.com/beginner/AB11-010.HTM
原文:What I remember of my first day at Pembroke Lodge is tea in the servants hall. It was a large, bare room with a long massive table with chairs and a high stool. All the servants had their tea in this room except the house-keeper, the cook, the lady's maid, and the butler, who formed an aristocracy in the house-keeper's room.
誤訳の指摘:ペンブローク・ロッジに着いた当日の記憶は、使用人(召し使いたち)の食堂(Hall)で飲んだお茶である。その食堂は、広く、長くどっしりしたテーブルとテーブル用の椅子と、(背もたれのない)高い腰掛け一つだけしか置いてない部屋であった。使用人たちは皆この部屋でお茶を飲んだが、女中頭(松下注:日高氏は、house-keeper を「管理人」と訳されているが、ここでは後にでてくるように、ミセス・コックスという年輩の女中頭のことをさしている。ロッジ管理人は、後にでてくるシングルトン氏)とコックと祖母専属の女中(lady's maid)と執事(使用人頭)は、女中頭の部屋で上流階級を形成していた。
- 出典:ラッセル自伝』第1巻 https://russell-j.com/beginner/AB11-020.HTM
原文:My mother used to address meetings in favour of votes for women, and ...
誤訳の指摘:母は、婦人参政権支持の集会にしばしば出席して、よく演説した(誤訳:日高一輝訳『ラッセル自叙伝』では、「母は、婦人に投票するようにすすめるため、諸種の集会に出席して演説するのが常であった」となっている。イギリスで婦人参政権が認められたのは、1926年であることに注意)。
- 出典:ラッセル自伝』第1巻 https://russell-j.com/beginner/AB11-100.HTM
誤訳の指摘:私が6つか7つになると彼女は再度私をとりもどし、そうして'英国憲政史'を教えてくれた(松下注:日高氏は、English Constitutional history を「英語の構造上の歴史」と誤訳されているが、Constitutional と大文字になっていることからもわかるように、 英国における憲政の歴史のことを言っている。)。
- 出典:『ラッセル自伝』第1巻
誤訳の指摘:
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