15歳の少女からの質問(『拝啓B.ラッセル様』より)
* 原著:R.カスリルズ,B.フェインベルグ(編),日高一輝(訳)『拝啓バートランド・ラッセル様_市民との往復書簡集』'・・・。私はあなたの『結婚と性道徳』(Marriage and Morals, 1929)と『不評判なエッセイ集』(Unpopular Essays, 1950:市井三郎氏は,訳書名を『人類の将来-反俗評論集-』としている。)を拝読しました。私は15歳です。そのため,あなたの著作を理解するには若すぎると思っている大人達もいますが,私にはあなたの著作は,とても刺激的で,わかりやすく,簡潔なものであると思います。私はあなたに,以下の4つの質問をお尋ねしたいと思います。
- あなたは,『結婚と道徳』のなかで,黒人は劣等な人種であるとお書きになっておられますが,今でもそうお考えでしょうか。
- 私たちの世代の性にたいする態度や教育は,過去のそれと比べてどうなのでしょうか。
- 私は文筆家になりたいと思います。書き方(執筆法)を学ぶのにはどうしたらよいでしょうか。
- 私の最初の質問にたいするあなたのお答は「ノー」であると思いますが,その場合,アメリカでいま(1964年頃)行なわれています市民権運動(黒人などの civil rights movement)はどのように思われるでしょうか。'
ラッセルからの返事(1964年11月14日付)
拝啓 Miss Dorheim 様興味深いお手紙をありがとうございます。あなたのご質問に対して次のようにお答えします。
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私は今まで,黒人が「先天的に」劣等であるなどと考えたことは一度もありません。『結婚と性道徳』の記述は,黒人が置かれた環境条件づけ(environmental conditioning 置かれた環境によって条件づけられたもの)について言及したものです。そこのところは,明らかに不明瞭な書き方になっていて違った意味にとれられる恐れがあるため,あとの版では削除しました。
- あなたがたの世代の性にたいする態度は,私たちの世代のそれよりももっと健康的だと思います。今日でもなお,かなりの偽善と残酷さが残っていますが,最近ではより少なくなりました。性の自由にたいする(現代の)われわれの態度は,より知的なものとなっています。ただし,同性愛と性的逸脱行為(sexual eccentricities)については,いま(1964年)でも,嫌悪感をもって取り扱われています。嫌悪感を正当化するものは何もないですが。
- 書くことを学ぶのに最良の方法は,読むこと,そして大量に書くことです。
- 私はアメリカにおける市民権運動(松下注:公民権運動と訳すべき)に全面的に賛成するとともに,その勢いと闘争精神がますます盛り上がっていけばよいと期待しています。
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Dear Miss Dorheim,, (Marchi 17,1964)
... I never held Negroes to be inherently inferior. The statement in Marriage and Morals refers to environmental conditioning. I have had it withdrawn from subsequent editions because it is clearly ambiguous."
Source: Dear Bertrand Russell, 1969.
More info.: https://russell-j.com/beginner/DBR4-28.HTM