バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 真実の歴史が私達の与えたいと思っている道徳と矛盾するならば,我々の道徳はまちがっているにちがいないのであり,そのような道徳は捨ててしまうほうがよいであろう。私は,この上なく有徳ないくらかの人たちも含めて,多くの人が,事実は不都合なものであると気づいていることを十分認める。しかし,そのように思うのは,それらの人達の美徳のある種のひ弱さのせいである。真にたくましい道徳(倫理体系)は,世の中で実際に起こっていることを全て知ったとしても,ただ強化されるだけのものである。

If true history contradicts any moral we wish to teach, our moral must be wrong, and we had better abandon it. I quite admit that many people, including some of the most virtuous, find facts inconvenient, but that is due to a certain feebleness in their virtue. A truly robust morality can only be strengthened by the fullest knowledge of what really happens in the world.
 出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2: Education of character, chap. 11: Affection and Sympathy
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE11-120.HTM

 <寸言>
 権力者が権力を強めるにつれて自分(たち)の行為に甘くなり、ほとんどと言ってよいほど、圧政を行ったり、腐敗したりするようになるのは、歴史が証明している。  しかし、世間から権力批判を受けるようになると、自分たち(の政権)は民主的であり、独裁などという非難はあたらないと必ず弁解するが、そう言わなければならない事態こそ、すでに為政者が民衆から離れてしまっている証拠である。  そういう事態に危機感が強まり、国民の批判が強まり政権が崩壊すればよいが、そういう場合、多くの政府(国家)が行ってきたことは、海外(外国政府の横暴さなど)に目を向けさせることであった。仮想敵国を想定し危機を煽り、あるいは大規模な自然災害から国民の命を守るために、即ち、緊急事態に為政者が全権(指揮権)をふるえるようにするために必要だとし、非常事態措置法(緊急事態措置法)を通したり、必要なら憲法を改正するなどして、なし崩し的に、(結果として)国民が自分たちをしばる法律や社会体制をつくるという悲劇や喜劇が起こったことは忘れてはならない(あるいは知らなければならない)。  ナチス(ヒトラー)による政権掌握も、民主主義的な手続き(議会による賛成多数)によって、いわば「お試し改憲」によって、そういう事態が実現したのである。