何らかの災難が迫ってきたときには,起こりうる最悪の事態はどのようなものであるか,真摯かつ慎重に考えてみるといい。起こりうる災難を直視した後は,それは結局,それほど恐ろしい災難ではないだろうとみなすに足る,しっかりした理由を見つけるとよい。そのような理由は,常に存在している。なぜなら,最悪の場合でも,人間に起こることは,何ひとつ宇宙的な重要性を持つものではないからである。
When some misfortune threatens, consider seriously and deliberately what is the very worst that could possibly happen. Having looked this possible misfortune in the face, give yourself sound reasons for thinking that after all it would be no such very terrible disaster.
出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap.5: Fatigue
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA15-050.HTM
<寸言>
逃げられないと思ったら,無駄な抵抗をやめて,積極的に問題に対処したほうがよい。その際,最悪の事態を予想し,最悪の事態が起こってもなんとか耐えられると思ったら,恐怖心や不安をかなり少なくすることができますので,よい考えが浮かぶ可能性が出てくる。 そういうやり方を繰り返しているうちに,いろいろな困難な問題により対処しやすくなるはず。
幸福というの天から降ってくるもの(棚からぼた餅)ではなく,努力して勝ち取るものだという考えから,ラッセルは本書のタイトルを The Conquest of Happiness (幸福の獲得/努力によって幸福を獲得すること)とした。『幸福論』というのは日本向けの訳書名であり,訳書名に「幸福は勝ち取るもの」といったサブタイトルをつけたほうがより適切だが,それでは売れなくなる?