このほかにも,「老齢による無分別」に関係があると考えられるので,ここで言及してよいと思われる私に対する批判が4つある。それらのなかで最もひどいのは,私が著作や演説で出典を明らかにしないで極端な主張をしているという批判である。こうした非難は,私の著書『ヴェトナムにおける戦争犯罪』に狙いを定めたものだと私は信じている。けれども,もし誰かがこの本に関心を持って調査研究すれば,この本は典拠や引用などでよく証拠付けられているということがわかるだろう,と私は考える。
There are four other charges brought against me which I might mention here since I suppose they are connected, also, with 'The folly of age'. The most serious is that I make extreme statements in my writings and speeches for which I do not give my sources. This is levelled, I believe, against my book War Crimes in Vietnam. If anyone cares to study this book, however, I think that they will find it well documented.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, chap4:The Foundation,(1969)
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB34-170.HTM
<寸言>
不都合な事実を指摘され、議論で勝てないと悟ると、(批判する)相手についてのデマを流したり、イメージを下げるためにいろいろな手を尽くす。まるで、どこかの国の保守政権のよう。 亡くなる2日前(19701.31)に書いたパレスチナ問題に関する(カイロ会議への)メッセージを読めばわかるように、ラッセルは,97歳7ケ月(数えで98歳)で死ぬまで頭脳は明晰そのものであった。 しかし、晩年のラッセルの言動を知らない人は、「ラッセルは年をとって耄碌(もうろく)してしまった」とか「支援者の言いなりになっている」とか,悪意のある記事がでると、確かめようとしないで、信じてしまう人も少なくない。 ラッセルは、 War Crimes in Vietnam (1967)(『ヴェトナムの戦争犯罪』)を執筆するにあたり、New York Times など、できるだけアメリカの新聞にのった記事をもと(証拠)にして書いている。ただ率直に事実だけを伝えるだけの小さな記事も丹念に拾っている。 そう、他国の新聞やヴェトナム戦争を批判する新聞・雑誌等からの引用であれば、米国側は,その記事は誤報だとか、偏向だとか言って無視すればよいかも知れないが、米国のヴェトナム介入を支持していた新聞の記事に書かれたことを「論理でつないで」いったものは、否定することはとても難しい。政治家と違い、ジャーナリストであれば、痛いところをつかれたならば、簡単に無視できないはずである。
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