バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 

 我々は自殺の問題をその当否よりも,人命の尊さに関連づけて考える傾向がある。しかし,この'人命尊重'という言葉を真面目にとるのは不当(ルール違反)だと思う。なぜなら人命の尊重を真剣に考える人は,戦争を非難しなければならないことになるからである。今の世の中で戦争が我々の制度の一部分になっている限り,惨めな人生を送り自殺までも企てなければならない不幸な人たちに対して人命尊重を引き合いに出すことは,全くの偽善である。
The subject of suicide is apt to be considered not on its merits but in relation to what is called the sacredness of human life. I find, however, that it is illegal to take this phrase seriously, since those who do so are compelled to condemn war. So long as war remains part of our institutions it is mere hypocrisy to invoke the sacredness of human life against those unfortunates whose misery leads them to attempts suicide.
   出典:llegal?, Mar. 9, 1932. In: Morals and Others, v.1 (1975)
 詳細情報:http://russell-j.com/ILLEGAL.HTM

 <寸言>
 ラッセルはもちろん、戦争を肯定しているわけでなく、戦争で利益を得ている企業の製品やサービスを買うことによって間接的に戦争を支持しておきながら、人命尊重の観点から自殺を非難する偽善者をここでは非難しています。  自殺についての考え方・感じ方は,国・地域や文化によりかなり異なっています。  日本社会においては,自殺の理由がなんであれ,自殺した(自殺をせざるを得ないほどひどい状況に置かれていた)人間に対して憐憫の情を覚える人が多いですが,欧米特に米国においては大変事情が異なっています。自殺者や自殺未遂者に対する目は厳しすぎると言わざるを得ません。  西洋社会(特にキリスト教社会)にあって,ラッセルのような見方をする人は多くないようです。  人命の尊重を最重要だと主張し,自殺を潔しとしない人や社会は,(大量死をもたらす)戦争や戦争の危険性を増大させる軍拡競争や武器の売買(例:現政権による武器輸出制限の緩和の動き)等に対しては猛反対をしなくてはならないはずです。  そうでない(経済的利益追求のためには支持するよりほかないと見て見ぬふりをする)としたら,ラッセルが言うように,その人や社会は '偽善的である' と言わざるを得ません。