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バートランド・ラッセル 自伝 第1巻第5章 - ベルリンで経済学研究(松下彰良 訳)- The Autobiography of Bertrand Russell, v.1

前ページ 次ページ 第1巻 第5章(初婚)累積版  総目次


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 私たちは,結婚生活の初めの何年かを,多くの外国の国々を見てまわろうと心に決めていた。そこで,私たちは,1895年の最初の3ヶ月間をベルリンで過ごした。私はベルリン大学に行って,そこで主として経済学を研究した(訳注:この研究の成果は,翌年,ラッセルの最初の著作 German Social Democracy として出版された)。(また)大学特別研究員の資格をとるための(数学に関する)学位論文の執筆作業も続けた。私たちは,週3回音楽会に行き,それから私たちは,ドイツ社会民主党員たちと知り合うようになったが,彼らは当時とても邪悪な人間であると考えられていた。駐独イギリス大使夫人であるレディ・エルミントルード・マレット(?)(Lady Ermyntrude Malet)は,私の従妹であり,その関係で,私たちは,大使館での晩餐会に招待された。大使館員は皆友好的であった。そして館員たちは全員,晩餐に出席すると言っていた。しかし,誰もやって来なかった。私たちが大使館を訪ねた時,(出席者は)誰もくつろいでいなかった。私たちは長い間,これらのことについてほとんど気が付いていなかった。しかしついに私たちは,その原因は,私たちが社会主義者の集会に出席したことをアリスが大使に話したためである,ということがわかった。私たちはこの事実を,私の祖母に宛てた大使夫人レデイ・エルミントルードの手紙から知った。祖母はアリスに対し偏見をもっていたにもかかわらず,この問題に関しては,完全にアリスに味方した。この問題は,公的な問題であった。(私的な問題ではなく)あらゆる公的な政治問題に関しては,祖母もアガサ叔母さんも,二人とも,自由主義的でないことにおいて,常に信頼のおける人たちであった(個人的な事柄においては自由主義的であっても,社会問題においては社会主義に理解を示した,ということ)


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We had decided that during the early years of our married life, we would see a good deal of foreign countries, and accordingly we spent the first three months of 1895 in Berlin. I went to the university, where I chiefly studied economics. I continued to work at my Fellowship dissertation. We went to concerts three times a week, and we began to know the Social Democrats, who were at that time considered very wicked. Lady Ermyntrude Malet, the wife of the Ambassador, was my cousin, so we were asked to dinner at the Embassy. Everybody was friendly, and the attaches all said they would call. However, none of them came, and when we called at the Embassy, nobody was at home. For a long time we hardly noticed all this, but at last we discovered that it was due to Alys having mentioned to the Ambassador that we had been to a socialist meeting. We learned this from a letter of Lady Ermyntrude's to my grandmother. In spite of my grandmother's prejudice against Alys, she completely sided with her on this matter. The issue was a public one, and on all public political issues, both she and my Aunt Agatha could always be relied upon not to be liberal.
(掲載日:2005.08.29/更新日:2010.1.1)