バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 固有の反価値のある行為(注:有害な行為)を行う者に苦痛を与えることに固有の価値があるだろうか? 地獄を信じる者は肯定的に答えなければならないし、刑法の目的が単なる(犯罪の)抑止や(罪人の)更正であってはならないと信じる者も同様である。厳格な道徳主義者の中には、快楽には固有の価値がないと主張する者もいるが、彼らは同時に、徳の高い者は天国で幸福になれると主張しているのだから、この主張が誠実であるとは私には思えない。報復的な処罰の問題はもっと深刻である。なぜなら、道徳的規則に関する意見の相違の場合と同様、この問題には議論する方法がないからである。もしあなたがそれを良いと思い、私がそれを悪いと思うのであれば、私達はどちらも、自分の信念を裏付けるいかなる理由も提示することはできない。

Is there intrinsic value in inflicting pain upon those whose acts have intrinsic disvalue? Believers in hell must answer in the affirmative, and so must all those who believe that the purpose of the criminal law should not be merely deterrent and reformatory. Some stern moralists have maintained that pleasure has no intrinsic value, but I do not think they were quite sincere in this, as they maintained at the same time that the virtuous will be happy in heaven. The question of vindictive punishment is more serious, because, as in the case of disagreement about moral rules, there is no way in which the matter can be argued: if you think it good and I think it bad, neither of us can advance any reasons whatever in support of our belief.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter98:Is there ethical knowledge ?
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0906.htm

<寸言>
「those whose acts have intrinsic disvalue」は「固有の価値のない行為をする者」ではなく、「固有の反価値のある行為(注:有害な行為)をする者」のことです。前者だと「毒にも薬にもならない行為を行う者」も含まれてしまいます。
 キリスト教の信者が多い国でも、イスラム教の信者が多い国でも、宗教を信じる人が多い国では、「報復的な処罰」を正当化する人が多く存在します。それに比べ、日本など無宗教の人が多い国では、「報復的な処罰」を否定的にとらえる人が多く存在します。
 アメリカのような民主主義国においては、罪を犯した者は、自国民であれば裁判によって慎重に裁かれますが、敵対国の人間やテロリストに対しては「報復的な処罰」が行われ、その巻き添えで死亡しても、「仕方のないこと」として無視されてしまいます。

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