バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 けれども、伝統的には哲学に含まれており、科学的方法が不十分である(ところの)、広大な分野が残っている。この分野には、価値に関する究極的な諸問題が含まれている。例えば、残酷な行為を楽しむことが悪いことであることを、科学だけでは証明することはできない。知ることができるものは何でも、科学的方法で知ることができる。しかし、正当に感情の問題であるものは、科学的方法の領域外にある(のである)。

There remains, however, a vast field, traditionally included in philosophy, where scientific methods are inadequate. This field includes ultimate questions of value; science alone, for example, cannot prove that it is bad to enjoy the infliction of cruelty. Whatever can be known, can be known by means of science; but things which are legitimately matters of feeling lie outside its province.
Source: A History of Western Philosophy, 1945, Book III, chapter 31: the philosophy of logical positivism, p.788.
More info.: Not availablehttps://russell-j.com/cool/HWP_1945.pdf

<寸言>
 日本や独仏等のヨーロッパ大陸の哲学界においては、価値や倫理の問題を哲学の重要な対象としています。しかし、英米の分析哲学、特にラッセルの場合、価値の問題は哲学の中心問題ではなく、主に倫理学や政治哲学・政治思想の問題として扱われています。ラッセルの倫理思想の集大成の著書は哲学書ではなく、Human Society in Ethics and Politics 1954. です。

 地球上にごく少数の人間しか住んでおらず、各家族が広い地域に分散していれば、倫理や価値の問題はほとんど生じません。人間が集団生活をするようになって初めて、倫理や価値の問題が重要となっていきます(きました)。そのことからわかるように、倫理や価値の問題は利害調整が最も重要であり、理屈だけでなく、感情が重要な要素となります。そういった意味では政治の具体的な問題です。政治「哲学」の問題と言ってもいいですが、知識論や認識論中心の理論的問題というより、実践的で具体的な問題なので、哲学とは別に、それにあった取り扱いをしたほうがよいと思われます。

 ラッセルは、倫理や価値の問題はより実践的な問題であるとして、平和運動や政治犯の解放運動など、様々な働きかけをしました。倫理や価値の問題は哲学の主要問題と言いながら、何も実践しない哲学者、と言って悪ければ、思想家とは段違いです。

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