ラッセル英単語・熟語1500 |
目下(注:1926年),政府は,デンマーク産の純正バターを食べるよりも,大英帝国の自治領産のベーコンやバターに含まれる防腐剤で国民が自らに毒を盛るように仕向ける目的で,年間65万ポンドを費やしている。この目的を確かなものにするために,わが国(英国)の子供達は,病気と不幸に苦しみ,知性をめざめさせないように運命づけられているが,(仮に),年間同額の予算が保育園のために使われたならば,多くの人々が救われるだろう。母親達は現在投票権(制限付き)を持っている。彼女達は,いつの日か,わが子の幸せのためにそれを行使するようになるのだろうか?
At the present moment the Government is spending £650,000 a year on such purposes as inducing people to poison themselves with preservatives in Dominion bacon ,and butter rather than eat pure butter from Denmark. To secure this end our children are condemned to disease and misery and unawakened intelligence, from which multitudes could be saved by the same sum a year spent on nursery schools. The mothers now have the vote; will they some day learn to use it for the good of their children?
Source: On Education, especially in early childhood, 1926
More info.: https://russell-j.com/beginner/OE13-050.HTM
<寸言>
本書の出版は1926年です。英国では、1918年に「制限」選挙権が女性に認められました。男女平等の普通選挙権が認められたのは(『教育論』を出版してから)2年後の1928年のことです。
この引用直前に以下のように書かれています。
「1918年の教育法のもと,保育園は国費(の助成)によって促進される予定になっていた。しかし,ゲデス削減案(注:1922年に英国の前運輸省長官で実業家エリック・ゲデス Eric Geddesを長とする委員会が提出した大幅な歳出削減案)が通過したとき,日本との戦争を容易にするために,巡洋艦を建造し,シンガポールのドックを造るほうが重要であると決定されてしまった。」
自民党他が日本の防衛費を5年以内に現在の2倍(国家予算の1割位)にせよと叫んでいますが、そうなると福祉や医療の予算はけずられる(あるいは、増やすべきものを増やさない)ことになりそうです。
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