バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )


ラッセル英単語・熟語1500
 人類が破滅に向かっていることに対する大部分の人間の態度に,私は驚いた。1959年12月,私はネビル・シュートの『渚にて』を読み,その映画の試写会に出席した。その映画は,核戦争に(必然的に伴う)恐ろしく,残酷な事実から,即ち,汚染された空気や水や土壌によってひき起こされる病気や苦痛,通信手段のまったくない無政府状態において住民の間に起こりそうな略奪や殺人,また,起こる可能性のあるあらゆる災害や苦しみから,故意に目をそらそうとしていたので,私はがっかりさせられた。・・・。私自身もその映画を見た直後は,少しでもよいところがあればまったくないよりましだという,後に間違っていると思うようになった意見のもと賞賛した事実によって,私は非常に苦しめられた。

The attitude of most of humanity towards its own destruction surprised me. In December, 1959, I had read Neville Shute's On the Beach and I attended a private viewing of its film. I was cast down by the deliberate turning away it displayed from the horrible, harsh facts entailed by nuclear war - the disease and suffering caused by poisoned air and water and soil, the looting and murder likely among a population in anarchy with no means of communication, and all the probable evils and pain. ... I was particularly distressed by the fact that I myself had praised the film directly after seeing it in what I came to think the mistaken opinion that a little was better than nothing
 Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3 chap. 3
 More info.: https://russell-j.com/beginner/AB33-130.HTM

<寸言>
 「少しでもよいものがあればないよりはましだ(そのように考えるべきだ)」という判断基準や態度は、適切な場合と、適切とは言えない場合があります。また、そういった「余裕のある態度」は第三者ならではとれる態度であり、直接の被害者や被害を受けそうな者はとれそうもありません。
 新型コロナの感染も同様で、感染しにくい生活をしている人や、感染しても高度医療を受けられる地位や立場にあったり、高額治療費や差額ベッド代などまったく気にしなくてよい人は、そういった余裕をもった態度をとることができます。それに反し、多くの人を相手にしなければならないエッセンシャルワーカや、狭い家に住んでいる人、その他、いろいろな意味で弱者の場合は危険性がより増します。
 ということで、「余裕のある態度」も、一般化できる場合はよいですが、そうではなく、弱者にしわよせがゆくような「余裕のある態度」は推奨できるものではありません。

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