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私はシカゴ大学で規模の大きなゼミを持ち,オックスフォード大学の時と同じテーマ,即ち「言語と事実」について講義を続けた。・・・。それはとても楽しいゼミであった。そのゼミにはカルナップとチャールズ・モリスがいつも出席しており,また三人の飛びぬけて優秀な学生,ダルキーとカプランとコピロウィッシュが出席していた。われわれはいつも行きつ戻りつしながら充実した議論を続けた。そうして,そういうことは哲学上の議論においてはごくまれなことであるが,お互いに満足のいくまで問題点を整理することに成功した。このゼミを別にすれば,シカゴ時代は不愉快なものであった。町は不潔であり,気候はひどかった。
In Chicago I had a large seminar, where I continued to lecture on the same subject as at Oxford, namely, 'Words and Facts.... It was an extraordinarily delightful seminar. Carnap and Charles Morris used to come to it, and I had three pupils of quite outstanding ability Dalkey, Kaplan, and Copilowish. We used to have close arguments back and forth, and succeeded in genuinely clarifying points to our mutual satisfaction, which is rare in philosophical argument. Apart from this seminar, the time in Chicago was disagreeable. The town is beastly and the weather was vile.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB26-010.HTM
<寸言>
オックスフォード大学(1938年)、シカゴ大学(1938/1939年)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA, 1939/1940年)及びハーバード大学(Williams James Lectures, 1940)で講義した内容は、1940年12月に An Inquirery into Meaning ande Truth という書名で英米で出版されました。日本でも文化評論出版から1973年1月に、毛利可信(訳)『意味と真偽性-言語哲学的研究』として出版されています。
少し専門的な内容(哲学科の一般学生が理解できる内容)なので、ラッセルの一般向けの著作のようにスラスラと読めるものではないですが、引用文にあるように、多めの人数のゼミ生に対しわかりやすく述べられたものであり、多くの議論がなされて整理された結果なので、難解と思われるところはほとんどないと思われます。
ただし、「訳者のことば」にあるように、「認識論、思考心理学、数理論理学等をふまえた、意味論・知識論であり、包括的に言えばひとつの言語哲学」ですので、訳書には付録として、「ラッセルの言語観」と「記号論理学解説」がつけられています。
大学関係者なら、主要大学の図書館で原著及び訳書を所蔵していますので、興味のある方は一読してみてください。
それから、シカゴの空気はよくなくて街がきたないというのは、ラッセルがシカゴ大学に行った1930年代末(つまり第二次世界大戦前)の状況と思われますが、気候についてはあまり好いとは言えなさそうです。シカゴ在住のある女性の面白い紹介記事「シカゴ在住の私がニューヨークを訪れた感想」がありましたので、ちょっとだけ引用しておきます。
http://kaigaigo.com/usa-15052/
・私は日本からシカゴに来たとき、シカゴの地下鉄って汚いなあ…と思いましたが、ニューヨークから戻ってきたらまるで天国のように見えました。
・街の美しさという点では、シカゴの方が(New York よりも)断然勝っていると思いました。
・旅を終えて私は率直にこう思いました。「住むならシカゴが良い。ニューヨークはたまに遊びに行くくらいで十分」と。
これを読むとシカゴは環境がだいぶ改善されているように思われます。
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