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私の抗議がどんなに無益なものであろうとも,戦争に抗議することは私の責務であると理解していた。私の人間としての全ての本質が関係していた。(第一に)真理を愛するものとして,全交戦国の自国本位の国家宣伝にむかむかさせられた。(第二に)文明を愛するものとして,野蛮への復帰にぞっとさせられた。(第三に)若者たちに対する親としての感情を損なわれたものとして,青年に対する大虐殺に心を苦しめた。第一次大戦に反対しても,自分にとって利益になることはほとんど出てこないだろうと思ったが,人間性の名誉のために,少なくとも足下をすくわれていない人々は,しっかりと自分の足で立っていることを示すべきであると思った。
I knew that it was my business to protest, however futile protest might be. My whole nature was involved. As a lover of truth, the national propaganda of all the belligerent nations sickened me. As a lover of civilisation, the return to barbarism appalled me. As a man of thwarted parental feeling, the massacre of the young wrung my heart. I hardly supposed that much good would come of opposing the War, but I felt that for the honour of human nature those who were not swept off their feet should show that they stood firm.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2
More info.:https://russell-j.com/beginner/AB21-050.HTM
<寸言>
日本の保守の「愛国主義者」の方々は、短絡的に、ラッセルは母国英国に対する「愛国心」に欠けていたと思ってしまうかも知れません。しかし、もちろんそうではありませんでした。上記の引用の直前の文章を引用しておきます。
「このような最中,私は自分の愛国心によってひどく苦しめられた。マルヌの戦い(第一次世界大戦初期の1914年9月5~12日,フランスのマルヌ河畔で行われた独仏の戦いでフランスが勝利した。)以前の,ドイツの数々の成功(勝利)は,私にとって,大変恐ろしいものであった。私は,いかなる退役した陸軍大佐にもおとらないくらい熱烈に,ドイツの敗北を願った。(母国)英国に対する愛情は,私のもっている感情のなかで最も強いものであるといってよいが,そのため,そのような時期において,愛国心が沸いてきたらそれをわきに追いやるという,困難な自制の努力をしていた。それにもかかわらず,私は何をなさなければならないかということについて,一瞬たりとも疑いを持たなかった。私は,大戦以前には,時々懐疑主義に陥って無力になったり,時々冷笑的になったり,それ以外の時には無関心になったりしたが,第一次大戦が勃発した時には,あたかも神の声を聞いたかのように感じた。」
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