『バートランド・ラッセル-反核の論理学者』(学芸みらい社刊)p.65で引用されているラッセルの言葉です(出典:『ラッセル自伝』第2巻第1章)。(n.14)
その刑務所に到着した時,入所のための調書をとらなければならない刑務所入口の看守によって,私は大変愉快な気分を味わった。彼が私の信仰している宗教は何かと尋ねたので,私は「不可知論者」(agnostic)だと答えた。彼はその語はどのように綴るのかと尋ねた。そうしてため息をつきながらこう言った。「まあなんというか,宗教はたくさんあるけど,全ての宗教が同一の神を拝んでいると思いますね」。この一言が,その後の約一週間,私を愉快にしてくれた。
I was much cheered, on my arrival, by the warder at the gate, who had to take particulars about me. He asked my religion and I replied 'agnostic'. He asked how to spell it, and remarked with a sigh: 'Well, there are many religions, but I suppose they all worship the same God.' This remark kept me cheerful for about a week.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2, 1968, chapt.1: The First World War.
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB21-270.HTM
<寸言> 戦前の日本では、反戦活動のために逮捕されて刑務所に入れられた人は、自白させるために拷問が当たり前のように行われ、そのために獄死する者も少なくなかった。獄死した「思想犯」は400名くらいいると言われているが、有名人としては小林多喜二(1933年2月20日)や三木清(1945年9月26日獄死)などがいる。三木清は敗戦からすでに一ヶ月余を経た時に獄死しており、政治犯が獄中で過酷な抑圧を受け続けている実態が判明し、GHQ(占領軍当局)を驚かせている。
ラッセルは特別扱いを受けたとしても、日英の民主主義の差はいかに大きいことか。現在でも、日本では一度捕まったら自白しないかぎり長期勾留が普通のことになっている。